「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。
老いた親が自暴自棄になる
「(「どうせ死ぬから」と言う親に)簡単にそういうことを言わないでよ」。これは「刻一刻と近づく死への恐怖を子どもにもわかってほしい」という気持ちから飛び出す言葉かもしれません。子どもとしては「なにを言っても慰めにならない。どう返したらいいのかわからない」と困り果ててしまう人もいるでしょう。
こういった場合は、「私もいずれは死ぬよ。それは順番だから」のように、私たち人間は「等しく死を迎える」という事実を淡々と伝えれば大丈夫です。ひねった返しは必要ありません。「みんな死ぬ。私たちは同じ立場なんだ」と親が理解できれば、多少なりとも気持ちは落ち着きます。
この事例で最も大切なのは、「どうせ死ぬから」という言葉の背景を理解してあげることです。もしかしたら、あなたの親は少しずつ自分に迫ってくる死に対して恐怖心を抱いているのかもしれません。「怖い」「逃げたい」などの感情です。
もっと言えば「心細いから、そばにいてほしい」というメッセージもあるかもしれません。いずれにせよ、親の気持ちに寄り添い、心に抱いている感情に耳を傾けてみると心を鎮めることができます。