機械のメンテナンスにおいて、幅広い産業で使用される潤滑油。一般的な化石由来の潤滑油は危険物として、消防法により管理方法などの厳しい規制が定められ、対応に課題を抱える企業も多い。こうした防火対策負荷を軽減し、焼却廃棄時の二酸化炭素(CO2)排出量削減にも寄与する植物由来の潤滑油をはじめ、環境製品を広く手がけるのが愛知県のアブラックスだ。(取材・文/大沢玲子)
同社は、塗装業を展開する斎藤塗工店の新規事業部門として、2022年に設立。
17年、取引先の自動車メーカーに環境対応として遮熱塗料を提案した際に、「社員食堂の使用済み油(廃食油)を精製し、工業用潤滑油として活用する環境事業の取り組みについて聞き、プロジェクトに参画したのが発端です」。同社代表取締役の板橋正浩氏はそう振り返る。
取引先での事業化は実現しなかったが、脱炭素社会実現に向けた世の中の流れも受け、会社をつくり本格的に研究開発を推進することを決意。
同じ愛知県の切削工具製造の地元大手企業に開発協力を依頼し、約2年間の実証実験を経て、廃食油を原料に工業用潤滑油を生み出すリサイクル技術を確立。22年、バイオ潤滑油「エイトオイル」として世に送り出す。
潤滑油保管の手間を
大幅に低減
同製品の特長は、化石由来から、植物由来の潤滑油にシフトすることでCO2排出量削減を実現する他、冒頭で触れたように、消防法が定める危険物の対象外となる、高引火点の可燃性液体類に分類されることが挙げられる。
引火点が低く、危険物に分類される従来の化石由来の潤滑油は、法が定める保管施設の整備や取扱数量などの規制が課されるが、「こうした条件が緩和されることで、工場での潤滑油保管の手間が大幅に低減します」と板橋氏。
当初、日本初のGX製品(環境製品)として打ち出したものの、従来品より割高なこともあって、「環境によい」というPRだけでは受注はおぼつかない。潤滑油変更による機械への影響など、リスク管理の問題も導入ハードルとなった。
そこで、同社では、Jクレジットの認証取得に取り組み、同製品1000リットル導入に対し、約2トンのCO2削減というエビデンスを明らかにするとともに、現場の声から、消防法対策を前面に打ち出し、導入実績向上につなげていく。