独自の撚糸で開発したタオルが大ヒット、福島に一大施設を建て、復興に挑む

──社名の「撚糸」とは何でしょうか?

浅野 綿を紡いで1本の糸(紡績糸)が生まれます。その紡績糸を安定させるために2本に合わせ撚ることを、通常「撚糸」といいます。弊社は、多様な糸を撚り合わせたり、撚り方を変えたりすることで、風合いや丈夫さが全く異なる糸を作り出せます。

 この技術を生かして、大手アパレルメーカーや商社に糸を販売している他、さまざまな事業に取り組んでいます。

──どんな事業ですか?

独自の撚糸で開発したタオルが大ヒット、福島に一大施設を建て、復興に挑む代表取締役社長・浅野雅己氏。1960年生まれ。82年に福島大学教育学部を卒業後、中学校の体育教諭を経て、87年に浅野撚糸に入社。95年に2代目の代表取締役社長に就任。

浅野 一つは、オリジナルブランド糸の開発です。主力は2005年にリリースした「SUPER ZERO(R)」。クラレトレーディングさまと約2年にわたり共同開発しました。クラレさまの水溶性糸と紡績糸などを撚り合わせた後に水溶性糸だけを溶かすことで、繊維の中に空気が入り込み、軽くて柔らかい風合いと吸水力を併せ持った糸を生み出しました。

 このSUPER ZEROを使い、07年に開発したブランドタオルが「エアーかおる」です。吸水力を生かして、従来の半分サイズのバスタオルを販売したら、「頭に巻きやすい」「洗濯回数が少なくて済む」と大人気に。ピーク時は1回のテレビ通販で1億円以上売れました。

──大ヒット商品ですね。

浅野 現在は、エアーかおるの直営店を岐阜・安八町、東京・南青山、福島・双葉町の3カ所で展開しています。19年にオープンした安八町の「エアーかおる本丸」はカフェや日本庭園などがある複合施設で、毎日観光バスが訪れます。23年開設の双葉町の「フタバスーパーゼロミル」はカフェの他、本社工場の倍以上の機械をそろえた工場も併設しています。