「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノ―ト』が発刊されました。本記事では著者である萩原礼紀氏のインタビュ―記事をお届けします。
親が年甲斐もなくムチャを続ける
――「高齢の親がムチャばかりして困る」という悩みは多いと思います。萩原さんのところにもそういった悩み相談があったりするのでしょうか。
萩原礼紀(以下、萩原):そういった悩み相談は非常に多いです。高齢になっても、若い感覚のまま行動してしまう人は多いですから、家族はそれに振り回されてしまうわけです。元気ではいてほしいですが、ムチャをするのはやめてほしいというのは、どの家族にとっても共通の悩みなのではないでしょうか。
なかでも特に多いのは、「もう若くないんだから、危険なことはやめてよ」と子どもが伝えたところ、「年寄り扱いするんじゃない!」とケンカになってしまうケースです。
子どもとしてはケガで後遺症でも残ったら大変ですから心配をしているだけなのに、このようなことを言い返されたら「じゃあ勝手にすれば!」という気持ちになりますよね。
――たしかに、「あるあるシーン」なように思います。では、そういった場合はどのようなコミュニケーションを取るのがいいのでしょうか。
萩原:まず、知っておいていただきたいのは、子どもが「やめて」と伝えた行為は親にとって生きがいかもしれないということです。
たとえば、自転車は転倒や事故のリスクがありますが、親にとっては一番の趣味かもしれません。それを一方的に「やめて」と言われたらどんな気持ちになるでしょうか。その点をまずは考えていただけると、強い言葉はでなくなるかと思います。
そのうえで、やってほしいことは「自分の経験談を先に伝えながら妥協案を探ること」です。たとえば、自転車であれば、「この前、自転車で転びかけている人がいてドキッとしたんだ。お父さんはそんなシーンない?」と聞いてみましょう。
最初は、「そんな経験はない」などと言ってくるかもしれませんが、親としても転倒や事故のリスクは理解しているはずですから、皆さんが心配している気持ちは伝わるでしょう。
そうなったあとに「自転車で遠出するときは誰かと一緒に行く」「すぐに連絡を取れるようにしておく」などの妥協案を提案しましょう。
いきなり行動を制限するのではなく、心配の気持ちを伝えて妥協案を提案すれば、ケンカになる可能性は大幅に減らせます。子どもに気にかけてもらってうれしくない親はいないですから、一度は試していただく価値があるかと思います。
――ありがとうございます。大変勉強になりました。