日本自動車殿堂のトヨタ「クラウン(セダン)」、RJCのスズキ「スイフト」、COTYのホンダ「フリード」。3つの車種が選ばれたのは、それぞれの選ぶ側の選考委員の特性もあるが、このモビリティ新時代への移行状況と実際の市場動向が反映されたものといえよう。

 まず、トヨタのクラウンは、「いつかはクラウン」のキャッチフレーズで知られた高級車であり、日本を代表する乗用車でもある。現行車は16代目で、これまで「クロスオーバー」「スポーツ」に続き今回受賞した「セダン」が投入され、国内では25年2月に「エステート」も発売される予定だ。かつては輸出仕様車もあったが1972年以降“日本市場専用”だったクラウンだが、この16代目からは北米・中国市場にも投入され大変身を遂げている。その中心であるセダンが評価された形だ。

 スズキのスイフトは、軽自動車だけではない、スズキ小型車の主力の「世界戦略車」だ。現在は4代目となるが、RJCカーオブザイヤーは4代すべてが受賞しており、スズキ躍進の推進力となってきた。さらに注目されるのが、10月中旬に発売したばかりのインド製コンパクトSUV「フロンクス」がCOTYの10ベストカーに選ばれて最終選考でも高得点を集めたことである。

 また、コンパクトミニバンのホンダのフリードは、3代目として今年6月に発売された新型車だ。日本・カー・オブ・ザ・イヤーをミニバンが受賞するのは今回が初めてだ。「国内で売れているのは軽の『N-BOX』だけ」という状況から脱皮するためにも、ホンダにとって小型車の主力として期待がかかるミニバンだ。

 受賞理由は三車三様だが、一つ特徴的なのが、いずれの受賞車も世界や国内で主流となっているSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)ではないこと、さらに、電動車時代の主役と期待されていたBEV(バッテリーEV)でもないことだ。

 ここに一つ、実際の市場動向のリアルな反映という背景がうかがえる。