日産自動車の内田誠社長の続投が決まり、引き続き経営の舵取りを担うことになった。それでも、一難去ってまた一難。人事の次は出資交渉が難航しているという。日産の財務体質は急速に悪化しており、資本増強策は経営再建計画の欠かせないピースだ。日産経営陣が救世主として期待する本命は、ホンダ一択だが、当のホンダは提携深化に二の足を踏んでいる。ホンダが日産への出資に難色を示しているのはなぜなのか。特集『日産 消滅危機』の#6では、「(技術提携を結ぶ)ホンダ、日産、三菱自動車で構成される3社連合」とトヨタ自動車との実力を24の経営指標を使って徹底比較した。ホンダが日産との統合に躊躇する「意外な理由」が浮き彫りになった。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)
日産内田社長の続投が決定!
幹部人事の次は出資交渉に暗雲
日産自動車の内田誠社長の続投が固まった。先週開催された指名委員会では、構造改革プランが決まっていないことなどを理由に内田氏の再任に反対を表明した取締役もいたが、すんでのところで首がつながった。
同時に、内田氏が策定した1月付けの役員人事案もほぼ固まった模様だ。内田氏は、1月付けと4月付けの2段階で役員体制を刷新することを明言していた。
今回の1月人事では、最高意思決定機関であるエグゼクティブ・コミッティ(EC)のメンバーのうち、最高財務責任者(CFO)のスティーブン・マー氏など少数幹部を入れ替えるだけのマイナーチェンジにとどまる予定だ(マー氏の退任理由については本特集の#5『日産CFO退任観測で波乱!最高幹部“総退陣”は不可避、浮上する「内田社長の後継候補」とは』参照)。
日産は全体で9000人の人員削減を実施することになっているが、それに先立ち経営責任のあるEC 12人と執行役員40人のスリム化を進めることは大前提だろう。今回の続投決定により、内田氏には4月人事を固めるまで“多少の猶予”ができたことになる。
一難去ってまた一難――。内田氏には、さらなる難題がのし掛かっている。人事の次のハードルは、仏ルノーに替わるパートナー探しである。これまで四半世紀に渡って日産の最大の協業先だったルノーだが、利益も配当も細った日産に見切りを付けつつあるのだ。
目下のところ日産の財務体質は急速に悪化しており、資本増強策は経営再建計画に欠かせないピースだ。新たなパートナーに資金要請をするのは自然な流れだ。そして、日産経営陣が救世主と定める本命が、技術提携を結ぶホンダだ。
ところが、である。あるホンダ関係者によれば、「日産への資本注入の検討は先送りされる方向」という。ホンダは日産との提携深化に二の足を踏んでいるのだ。
次ページでは、「ホンダ、日産、三菱自動車の3社連合とトヨタ自動車」との実力を24の経営指標で徹底比較した。こうして導かれた意外な勝敗結果から、ホンダが日産との合流を躊躇する理由を炙り出す。