もちろん、「消費者から支持されていない売れ筋でない車が受賞するのがおかしい」というつもりは毛頭ない。むしろ、1980年にCOTYによる日本カー・オブ・ザ・イヤーが創設されて以来、一連の動向を見ると、かつて自動車メーカーが、自社の販売促進に活用するために審査員に接待攻勢をして受賞を狙うなど、カーオブザイヤーの本質が見失われているとの危惧が出た時期もあった。
その後、RJCによるカーオブザイヤー、さらに日本自動車殿堂と別のカーオブザイヤーが生まれ、自動車評論家や学術研究者などそれぞれの選考委員が感性や好みで選ぶことで、各賞での違いが生じるという方向へと変化していった。実は筆者も、昨年までRJCの選考委員を10年間ほど務めていた。今年は選考委員を退いたが、カーオブザイヤー選考の実情をそれなりに掌握している。
最近のカーオブザイヤー受賞車が「ベストセラーカー」とは限らないし、自動車メーカーによっては、カーオブザイヤーに意欲を示さない「アンチ派」メーカーすらも存在する。また、国内で圧倒的な販売シェアを確保するトヨタは、ここ数年の傾向としてカーオブザイヤーに複数車種がノミネートされることで、選考委員の票が分散することが多くなっている。
ここで注目したいのは、2年前の22年に日本独自の軽BEVとしてCOTY・RJC・日本自動車殿堂のカーオブザイヤー“三冠王”となった「日産サクラ/三菱自eKクロスEV」だ。三冠王という非常に注目を集めた受賞だったが、2年たった足元では販売が低迷し、11月新車販売台数では、サクラ・eKクロスEVのいずれも前年同月比30%以上の大幅減となっている。初の軽BEVという技術的にも意欲的な車であることが評価された一方、実際の市場はそこまで追いつかず、ギャップが一目瞭然となってしまった。