近年の就活市場は、就職率が過去最高レベルに達するなど“売り手”有利の色合いが濃い。しかし市場全体の雰囲気と個々の就活生の状況にはギャップもある。思わぬ“落とし穴”に注意が必要だ。(取材・文/古井一匡)
2月以前に内定獲得が増
早期化に拍車
政府の発表によれば、2024年3月に卒業した大学生の4月1日時点の就職(内定)率は前年より0.8ポイント高い98.1%となり、1996年度の調査開始以来、最高となった。25年卒についても各種調査によれば、今のところ24年卒並みかそれを上回るペースで内定(内々定)が出ている。こうした“売り手”有利の状況と並行して進んでいるのが就活の早期化だ。
ダイヤモンド・ヒューマンリソース(DHR)の調査によると「就職活動について考え始めた時期」について「大学3年5月」までという回答が24年卒の約4割から、25年卒では5割を超えた。
内定(内々定)獲得時期は文系で「2月以前」が24.7%と24年卒から12.6ポイントの大幅増。23年卒で1位だった「6月上旬」は4.9%にとどまった。理系も「2月以前」が35.6%と24年卒から12.1ポイント増。早期化に拍車が掛かっている。
一方、就活を終える時期も早まっているかというと、そうではない。リクルート就職みらい研究所の調査によると、最初の内定(内々定)が出た後も約7割の学生が就活を続けている。その理由としては「より志望度の高い企業の選考を受けるため」(76.1%)が圧倒的に多く、「内定取得先の企業でいいのか不安に感じたため」(27.0%)が続く。
ちなみに、24年卒の実質的な就職活動期間は7.87カ月で、23年卒より若干短いが以前と比べれば伸びている。
「より志望度の高い企業」とは、主に人気の高い国内大手企業のこと。こうした企業も内定(内々定)を早めているが、表向きは従来通り大学3年生の3月に採用広報を開始し、採用面接は4年生の6月以降としている。
就活のスタートや内定(内々定)は早期化しつつ、人気の高い国内大手企業は従来通りのスケジュールを完全には崩していないことが長期化の背景にある。
“売り手”有利は全体としてみれば学生にとってメリットがあることは確かだが、目を凝らすと“落とし穴”も見える。