特集『総予測2025』の本稿では、米ハーバード大学の名誉学長を務める大物経済学者、ローレンス・サマーズ氏にインタビューを敢行。史上最年少の28歳で名門ハーバード大学の終身教授に就任し、クリントン政権時代の米財務長官やオバマ政権の国家経済会議委員長、世界銀行チーフエコノミストなどの要職を歴任してきた同氏に、トランプ次期政権下の米国経済の行方、日本経済の課題などを直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
“トランプ・ショック”に要警戒
突発的事象よりインフレを不安視
――トランプ次期政権下の2025年の米国経済に関して、どのようなシナリオを予想しますか。
米国経済を巡る良いニュースは、今のところ景気の悪化を示唆するような材料が特段、見当たらないことです。私としては、失業率がこのまま安定し(編集部注:直近24年11月の米失業率は4.2%)、それなりに堅調な経済成長が当面続くと予想しています。
もちろん、突発的な事象に振り回されることも考えられますが、それよりインフレのことを不安視しています。
というのも、基調的なインフレ率は、(市場関係者などによる)コンセンサスの想定より少し高いのではないかと考えており、一段の物価高を招きかねないトランプ・ショック、特に貿易関税強化や移民政策に伴う労働力供給の制限の影響を懸念しているからです。
次ページでは、米財務長官や国家経済会議委員長、世界銀行チーフエコノミストなどの要職を歴任してきた大物経済学者のローレンス・サマーズ氏が、大注目の米経済の今後数年間を左右する「唯一かつ最も重要な要素」の存在を明らかに。このほか、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策の先行きを巡る分析、過熱感が指摘される米株式相場やビットコインへの見方、トランプ次期政権の貿易追加関税による中国経済への影響、日本経済の本質的な課題に至るまでを一挙に回答する。