総予測2025#107Photo:Andrew Merry/gettyimages

首都圏のマンションを筆頭に、不動産価格の高騰が続いている。一方、日本銀行が利上げを進めていることで、不動産価格は下落に転じるとの声もある。2025年も不動産価格の高止まりは続くのか。それともバブルが弾けるのか。特集『総予測2025』の本稿では、25年の不動産市況や上場不動産投資信託(J-REIT)の行方を展望する。(日本不動産研究所主席研究員 吉野 薫)

不動産の建築費高騰に金利上昇
それでも市況悪化の兆しなし

 2024年に不動産投資市場関係者の間で大きな話題となったのは、建築費の高騰と金融環境の変化であった。前者については、着工の鈍さとして既に表れている。

 24年1月から10月までの新設住宅着工のうち、全国の分譲戸建て住宅は前年同期比11.8%減の10.1万戸、分譲マンションは同3.9%減の8.7万戸となった。

 非住宅の着工床面積は、コロナ禍直後の宅配需要急増に対応して一時期増加した倉庫の落ち込みが目立つ。一方、事務所や宿泊業用建築物の着工は東京など一部地域を中心に伸びており、建築費上昇を価格や賃料に転嫁できる見込みがある案件が下支えしている。

 しかし、建築費高騰が早晩解消されるとの見込みは薄く、建築物の着工は25年も案件の厳選を伴いながら低調に推移するだろう。

 また、市場関係者の多くは、金利上昇が不動産投資市場を取り巻く主要なリスクだと認識しており、不動産市場での借入金利は既に上昇し始めている。しかし、これまでのところ不動産市況が悪化に転じる兆しは認められない。地価の上昇は続き、地価上昇地点の裾野も広がっている。

 不動産投資家の投資意欲は高いままで、不動産投資市場での要求利回りも低位に抑制されている。また、投資用不動産の取引自体も活発である。

高止まりが続く不動産価格は今後どう動くのか。市況悪化のリスクは何か。次ページでは、J-REITなど、25年の不動産市況の注目点と見通しを展望する。