ベンチャーキャピタル(VC)などから外部資本を集め、スピード感を持ってイグジット(IPOやM&Aを通じて、出資者の利益を確定させる出口戦略のこと)を目指すスタートアップ。だが、その出口戦略自体は変わりつつある。特集『総予測2025』の本稿では、ヤフー代表を経て、24年に新たなVCを設立した小澤隆生氏に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 岩本有平)
上場間もないスタートアップの課題は
M&Aが解決する
――これまでのスタートアップは、ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達し、早期にIPO(新規上場)を目指すのが、いわば「基本」でした。ですが2024年以降、M&Aイグジット(出口戦略)に関する議論が過熱しています。
直近上場した多くのスタートアップは、IPO時の時価総額が特別に高いわけでもなく、その後の価格上昇も限定的です。つまり市場からの評価を得られていません。
またスタートアップの資金調達額は年々増加を続けてきましたが、上場時の時価総額はほとんど上がっていません。加えて、IPO社数も毎年100社前後で大きくは変化していません。指標がリンクしていない(調達額が上がっても、時価総額が上がらず、IPO件数も増えていない)状況です。
M&Aはそんな状況の解決策の一つとして分かりやすいのではないでしょうか。
スタートアップからすれば、自社の業績がIPOの基準に満たないときに「売り手」として事業を他社に託すのか、もしくは「買い手」として事業を増やして上を目指すのかを考えることができます。
一方で大企業では、この数年で「新規事業の開発がいかに困難か」ということへの理解が進みました。コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)も急増しましたが、結局マイノリティ出資でできることは限られます。ならばマジョリティー出資をして、自らの事業として取り組むべきだという空気が醸成されてきました。
こういった背景もあって、さまざまな角度から、M&Aに注目が集まったのだと思います。
スタートアップの出口戦略が変化する中、小澤氏が注目するのは一体どんな投資領域なのだろうか。次ページで明らかにする。