総予測2024#28Photo:SOPA Images/gettyimages

日銀の政策変更による影響に加えて、建築費の高騰、低迷が続くオフィス市況など不安要素が山積する不動産市況。都心部の地価は高値圏にあるが、今後も底堅く推移できるのか?特集『総予測2024』の本稿では、不動産市況の分析の第一人者である吉野薫氏に「楽観論が後退」する、2024年の日本の不動産市況について分析してもらった。(日本不動産研究所主席研究員、不動産エコノミスト 吉野 薫)

長期金利で楽観論後退も
地価の上昇は継続している

 2022年末以来、日本銀行が3回にわたってイールドカーブ・コントロール(YCC)政策に修正を加えた結果、長期金利は一時十数年ぶりの高水準に達した。J-REIT市場はその影響を一定程度受けたとみられ、23年を通じて東証REIT指数の上昇は極めて限定的なものにとどまった。

吉野薫・日本不動産研究所シニア不動産エコノミストよしの・かおる/東京大学経済学部卒業。東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。日系大手シンクタンクのコンサルティング部門を経て現職。

 しかし、不動産市場全般においては、これまで長期金利の上昇による影響は軽微であった。地価の上昇は継続し、不動産投資における期待利回りも低位で推移している。不動産投資家も積極的な投資姿勢を保っている。

 中古住宅価格などの一部の指標においては、価格上昇ペースの鈍化を示す結果も見られる。だが、これはコロナ禍以降に加速した住宅価格上昇の息切れ感を示すもので、金融環境の悪化を主因とする市況変化だと結論づけるのは早計である。

 もちろん、長らく続いた金利低下局面が既に終了したことに疑いはない。多くの不動産投資家は、今後のリスク要因として金利の上昇を意識している。24年にかけて、不動産投資市場における楽観はある程度後退するであろう。

次ページでは不動産市況の「楽観論後退」に対する分析やインフレと賃料の関係、さらにはオフィス市況や再開発の動向についても解説する。