好況の反動と資源価格の落ち着きに伴い、総合商社の純利益は伸び悩みつつある。しかし、伊藤忠商事は近年のTOB(株式公開買い付け)が功を奏し、首位奪還も見えてきた。特集『株価、序列、人事で明暗! 半期決算「勝ち組&負け組」【2024秋】』の#9では、財閥系商社を超えて総合商社の純利益1位に返り咲こうとする伊藤忠のシナリオと、その原動力を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)
伊藤忠と財閥系の純利益は僅差
下期の伸び次第で伊藤忠が首位も
総合商社の首位争いは近年、三つどもえの様相となっている。三井物産は2024年3月期通期決算で2年連続の純利益1兆円超を達成し、1999年度以来24年ぶりの首位に返り咲いた。
この5年ほどを振り返ると、21年3月期には伊藤忠商事がトップになるなど、絶対的王者だった三菱商事に2社が食らい付く展開だ。特に伊藤忠の猛追は目覚ましい。資源価格の高騰の追い風を受けた財閥系商社に対して、差を着実に縮めてきているのだ。
25年3月期通期の純利益の見通しは伊藤忠8800億円、三井物産9200億円、三菱商事9500億円で、下期の伸びによっては再び財閥系商社を追い抜く可能性がある。
ある伊藤忠幹部は「財閥系とは稼ぎ方が異なっているから」と語り、あくまで闘争心をむき出しにはしていない。だが、同社の岡藤正広会長の指揮下で、実際には総合商社トップに立つ機会を虎視眈々と狙っているようだ。
次ページでは、伊藤忠が近年押し進める主要なTOBを明らかにするほか、TOBで積み増してきた純利益やその投資の「コスパ」も数字で明らかにする。伊藤忠の「首位奪還」への道のりとは。