三菱商事が手掛ける洋上風力発電プロジェクトで顕在化した巨額減損危機。このピンチを乗り切る方策は、三菱商事に残されているのか。特集『洋上風力クライシス』(全6回)の#3では、エネルギー業界関係者の間でささやかれている、三菱商事が模索する「ウルトラC」の二大シナリオを大胆予想する。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
三菱商事が政府へ進捗状況をほぼ毎週報告
関係者「個別プロジェクトでは異例」
政府公募の洋上風力発電プロジェクトコンペ第1弾(以下、第1ラウンド)を価格破壊によって圧勝した三菱商事が、いよいよ危機的状況に立たされているーー。そんな情報が広まったのは、2024年の夏ごろのことだ。第1ラウンドのプロジェクトの進捗状況をほぼ毎週のように、三菱商事が経済産業省へ報告していることが判明したことがきっかけである。
もともと三菱商事が手にした第1ラウンドの3プロジェクトは採算が厳しい上、追加の海底地盤調査などによって当初のスケジュールから遅れていることは、エネルギー業界関係者の間で周知の事実だった。それでも、エネルギー業界関係者は「経産省に個別プロジェクトの進捗状況を逐一報告するなんて異例。状況は相当深刻だろう」と声を潜める。
本特集#1『三菱商事が洋上風力事業で「巨額減損」の瀬戸際、商社No.1の座危うし!コンペ第1弾で3案件を総取りも「3つの誤算」で窮地に』で詳報した通り、三菱商事は巨額損失の危機に立たされている。三菱商事は経産省とも議論をしながら、巨額損失を回避する打開策を練っているもようだ。
第1ラウンドを圧勝してから本格的にプロジェクトを進めて約3年が過ぎ、三菱商事が無傷でいられる可能性は残念ながら低い。それでも、ダメージを軽減する方策は残されている。
三菱商事が模索しているとみられる「ウルトラC」の二大シナリオが、エネルギー業界関係者の間でまことしやかにささやかれている。果たして、その二大シナリオとはーー。
次ページでは、三菱商事が模索している「ウルトラC」の二大シナリオを大胆予想する。その一つは、プロジェクトの根幹を揺るがす“禁じ手”だ。もう一つは、政府が最も回避したい最悪シナリオである。いずれにせよ、三菱商事、そして脱炭素の切り札として洋上風力を推進する政府は厳しい決断を迫られることになる。