年代別の、ジョブ・クラフティングの特徴と支援方法

 次に、若手社員、中堅社員、シニア社員という年代別のジョブ・クラフティングの特徴を高尾先生に説明してもらった。まず、若手社員のジョブ・クラフティングは、経験学習と密接に関係しているという。

高尾 よく知られているように、若手社員の成長には仕事経験から学ぶ経験学習が不可欠です。ジョブ・クラフティングに取り組むことは、経験学習の促進に寄与します。経験学習研究の第一人者である松尾睦教授(青山学院大学経営学部経営学科)が指摘しているように、経験学習の基本となる「経験→内省→教訓→応用」という経験学習サイクルを効果的に回していくためには、ストレッチ(挑戦する力)、リフレクション(振り返る力)、エンジョイメント(やりがいを感じる力)という3つの力が必要です。ジョブ・クラフティングで仕事をポジティブに意味づけることが、エンジョイメントの向上につながります。また、ジョブ・クラフティングをきっかけに新しい仕事に挑戦することは、ストレッチの向上につながります。

 若手社員に対しては、企業の経営層・管理職・人事部がジョブ・クラフティングの支援を行いやすいという。

高尾 若手社員の成長は、本人の課題であると同時に組織の課題でもあります。成長を促す観点から、本人の裁量を少し広げて、ジョブ・クラフティングを行いやすい環境を提供し、自分で考えて何かひと匙を入れることを推奨するというのは、本人・上司・人事部の三者が合意しやすいのではないでしょうか。さらに、経験学習と連動させることで、本人の成長実感がいっそう高まれば、従業員エンゲージメントの向上にもつながり、離職防止の効果も期待できると思います。ジョブ・クラフティング研修についても、とりわけ、若手社員やいままでジョブ・クラフティングに取り組んだことがない人に対する効果が高いという研究報告があります。

 続いて、中堅社員のジョブ・クラフティングについて――中堅社員は、若手社員とシニア社員の双方から見られている存在であり、その意味でジョブ・クラフティングの支援が大切になるという。

高尾 若手社員、シニア社員への支援との比較でいえば、中堅社員の支援は手薄になりがちです。しかしながら、中堅社員は若手社員、シニア社員の双方から見られている存在であり、中堅社員がジョブ・クラフティングをやるような雰囲気でなければ、若手もシニアもやりにくいと思います。