組織改革も進む。従来はエネルギー、繊維、食料のように商品や業界に基づく縦割りの業務部門を設け、部門ごとに事業戦略を計画するのが一般的だった。それを部門の垣根を越えて、戦略やテーマに基づく組織へと再編成している。

 住友商事の「ストラテジックビジネスユニット(SBU)」の導入がその例だ。

 業界に詳しいTHE BEYOND佐野智弘代表は「組織改編により社内の縦割り組織から脱却、『協業』体制が強化され、社内外の垣根を越えた連携が可能になる」と語る。

海外市場で注目される
アジア、アフリカの新興市場

 総合商社といえば、海外との取引も重要だ。国内市場が成熟する中、近年はアジアやアフリカ新興市場の開拓に重点が置かれている。

 例えば、伊藤忠商事は食糧問題への対応として、青果物のDole(ドール)事業の中でアフリカやアジアの新興国における農業プロジェクトに投資。現地の生産性向上や、環境負荷の低減を目指した農業の普及と食糧供給の安定化を目指している。このようにグローバルな視点を持った戦略が重要になっている。

 企業の社会的責任(CSR)への対応も注目される。業界では環境関連など社会的にかつては投資規模が小さかった分野が今や急成長を遂げていることを踏まえ、対応を急いでいる。伊藤忠商事は、プラスチックのリサイクルや食糧問題に積極的だ。三菱商事は、2050年までにカーボンニュートラルを目指すという長期目標を掲げ、具体的な行動計画を策定。そうして企業のブランド価値を高めようとしている。

 女性活躍の場も広がる。丸紅は、新卒採用で女性比率が40~50%になるよう意識しており、三菱商事も比率を高める方針だ。40代から女性執行役員登用を推進する会社もある。長期的なキャリアをイメージしやすい業界でもある。