「何度もアイデアが否定され…」JR東日本で社内起業に挑戦したワーキングマザーが語るリアルPhoto by Tomomi Matsuno
*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2025」の「親子で選ぶ『自分に合った』業界&働き方 企業選び編」を転載したものです。

「鉄道会社」と聞くと、駅での仕事を即座にイメージするかもしれない。実際には「それ以外」の事業がたくさんあり、中には未来の主要事業もあるだろう。そこで生かせるスキルは多様化している。非鉄道事業を拡大するJR東日本で実務を行う方々にどんな「スキル」を身に付けているのか取材した。先入観を捨てて業界・企業研究を進めてみよう。(ダイヤモンド・ライフ編集部)

鉄道×新規事業開発
JR東日本のケース

 JR東日本では、少子高齢化に伴う鉄道事業の収益低下に対応するため、かねて流通・サービスや不動産・ホテルなど非鉄道事業を拡大して収益の柱を多角化させてきた。

 そのため、常に全社で新たな事業アイデアを探している。グループ社員からアイデアを公募する「ON1000(オンセン)」プロジェクトは、その一環だ。

 書類審査を通過した企画は、プレゼンテーション審査に進み、そこで認められると社員は業務時間で新規事業の研究に取り組む。幹部審査を通過すると、さらに業務時間を増やし検証を進める。

 段階を踏んでアイデアが洗練され、マーケティング本部での最終審査を通過すれば、本格的に事業展開できる仕組みだ。期間は発案からおおむね1年間を計画しているという。

 実例を紹介しよう。勤続16年目の社内起業家(マーケティング本部所属)である小西好美氏は、出産を経て育児とキャリアの両立に悩んだ自身の経験を生かし、ワーキングマザー向けのキャリア支援サービス「PeerCross(ピアクロス)」を立案。入社から約10年の頃に起案したものが2023年7月に事業化した。

「育児と仕事の両立に慣れない中、周りは親切に仕事量を調整してくれた。内心はもっと仕事の幅を広げたい気持ちで、当時はマミートラックに陥っていた」(小西氏)