Bコープ認証で上場企業の
クラダシ、前例を創る
この他、経済利益と社会利益を共に追求する企業の判定基準で注目したいのが「Bコープ認証」だ。米国の非営利団体Bラボが、ガバナンス、従業員、コミュニティー、環境、顧客の5分野で申請企業を精査し、基準をクリアした企業にBコープ認証を付与する。
06年に始まり、認証企業は世界105カ国で9334社(24年10月現在)。有名企業では食品のダノンやアウトドア用品のパタゴニアなどがあるが、社会的営利企業としての志を持ったスタートアップが多い。審査は厳しく、偽りの「ウォッシュ経営」では認証されない。英語での申請や面談が必要で、日本のBコープ認証企業は45社(24年10月現在)と少ない。
しかし、Bラボの支部に相当する組織B Market Builder Japan(BMBJ)が今年新体制で再スタートし、日本企業の認証取得を支援しているため、今後は日本の認定企業は急増すると見込まれる。BMBJのサイトの「日本のB Corpを探す」のページに一覧表がある。
23年にはBコープ認証企業のクラダシが上場した。同社はフードロス削減を目標に、賛同会社より協賛価格で仕入れた商品を割引価格でネット販売するビジネスモデルで成長。23年度は売上高約29億円、純利益1200万円だ。売上金額の一部が社会貢献活動を行うNPOなどに寄付される。
「営利企業として利益を生みながら社会課題を解決していくことで、中長期的に事業を持続できる」とクラダシの河村晃平社長は言う。
上場企業になればこそ求められる利益創出と社会貢献のバランスを取るのは容易でないと想像されるが、同社のバリューの一つは「前例を創ろう」。前例がないからできないではなく、創意工夫で実現して、最初の前例を創ろうという価値観を社内で共有している。
クラダシに加えて、今年は、上場企業のサニーサイドアップグループがBコープ認証を取得した。さらに、シンクタンク大手の日本総合研究所、「クモの糸」に代表される構造タンパク質素材を人工合成・量産化する有力スタートアップのスパイバー(Spiber)なども認証を目指している。