「セクシー田中さん」問題、都知事選……
対立構図が支持され、消費される
2024年はSNS上で、いわゆる「オールドメディア」への反感が加速した1年だったが、その起点となったのは、日本テレビ系のドラマ「セクシー田中さん」をめぐる問題ではないか。
脚本家によるインスタグラムの投稿を受けて、原作者がブログやXで経緯を説明したことから、ネット上では脚本家と原作者、日本テレビと、原作の刊行元である小学館の対立構図として受け止められた。しかしながら最終的には、原作者が「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」と遺し、死去する結果となってしまった。
SNSの普及によって、トラブルの当事者同士が、自からの見解を語れるようになった。しかしデメリットとして、わかりやすい対立構図が支持される傾向がある。
本件も、根っこにある「漫画原作ドラマの業界的課題」を議論するのではなく、多くのネットユーザーにより「原作者vs. 脚本家」のバトルとして表層的に消費されてしまったことが、悲しい結末につながったのではないかと考えている。
政治の世界でも、今年は東京都知事選(7月)や兵庫県知事選(11月)を通して、「ネットメディアvs. オールドメディア」の構図が際立った。先ほどの「フワちゃんvs. やす子」もそうだ。二項対立に持ち込むことで、盛り上がりは増すが、そのぶん各論は軽視される傾向にある。気軽に使えるSNSだからこそ、安易な二元論にしないことが重要だと感じる。
ここまで2024年に起きた、3つの炎上事案を振り返りながら、背景にある課題を考えてきた。成田氏の事案からは「想像力を働かせる重要性」、フワちゃんからは「炎上直後の初動」、そしてセクシー田中さんからは「対立構図を消費する世論」といったキーワードを導き出すことができる。
誰でも気軽に発信できる時代だからこそ、いったん立ち止まって、「どう受け止められるか」を考えることが、SNS時代のコミュニケーションとして重要なのだろう。