資源バブルの追い風を受けて完全復活を果たし、欧米さえも脅かす存在となったロシアが向かう先はどこか。三井物産常務・戦略研究所所長の寺島実郎氏が徹底解説する。(聞き手:『週刊ダイヤモンド』佐藤寛久)
撮影:加藤昌人 |
なぜロシアが蘇ったか――。
9・11(米国同時多発テロ)が起きて以降、米国、ロシア、中国はイスラム原理主義者の台頭に対する恐怖心を共有し、テロとの戦いで連携した。ロシアや中国は、米国が中央アジアに軍事基地を持つことさえ容認した。
ロシアや中国にしてみれば、煮え湯を飲まされるに等しいことだが、ロシアもただでは転ばない。米国に協力する見返りとして、カネと技術を引き寄せたのだ。ソ連崩壊以降、ロシアの石油生産量は設備老朽化により急低下していた。だが、米国の技術を導入したことで、石油生産量は再びぐんぐん伸び始めた。昨年は世界1位のサウジアラビアと肩を並べる水準になったほどだ。
石油だけではない。サハリン2に象徴されるように、米国や日本など西側の最新技術を導入して、天然ガスの産出力も急上昇している。石油と天然ガスを合わせた化石燃料(石炭は除く)は日産2086万バレル。いまやロシアは世界断トツの産出国になった。しかも資源高の追い風が吹いた。9.11直前の2001年8月には、代表的な原油指標のWTIは1バレル27ドル25セントだった。それが約4倍の100ドルを超えた。
その間、プーチンはエネルギー戦略を確立して、エネルギー産業を国家の管理下に置いた。“エネルギー帝国主義”という言葉が登場したほど、エネルギーで蘇るロシアを鮮やかに演出して見せた。昨年末の外貨準備高は、中国、日本に次いで世界3位の4644億ドル。米国が約600億ドルであることを考えれば、いかにロシアが富める国になったかを痛感する。