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現在検討されている基礎年金と厚生年金のマクロ経済スライドの適用期間の一致によって受取額はどう変わるか。特集『年金制度大改革 損↓得↑徹底検証』の#10(最終回)では、日本年金機構の見込み額試算や「ねんきん定期便」では見えてこない本当の年金受取額を国民年金加入者について試算した。(ダイヤモンド編集部 竹田孝洋)
正社員になれなかった氷河期世代は
国民年金にしか加入できなかった
自営業の人向けに作られたのが“国民年金”のはずだった。
しかし、1990年代半ば以降の就職氷河期が事情を変えた。氷河期世代は正社員として就職できず、アルバイトなどの非正規雇用で働いてきた人たちが少なからずいる。そうした人たちは厚生年金に加入できず国民年金に加入するほかなかった。
2016年に、501人以上の従業員を抱える企業ではパートなどの短時間労働者でも年収などの要件を満たせば、厚生年金に加入できるようになった。今回の改正案が成立すれば、週20時間以上働くパートなどの短時間労働者は企業規模にかかわらず厚生年金に加入できるようになるが、ギグワーカーのような業務委託で働く人たちは国民年金のままである。
本特集#1『【基礎年金底上げ】氷河期・若者には朗報で高齢者には悲報!?マクロ経済スライドの適用期間一致でどう変わるかを徹底解説』で取り上げたように、現状では国民年金加入者が受け取る基礎年金の将来水準が低くなり過ぎる。
氷河期世代の国民年金のみの加入者、基礎年金主体の厚生年金加入者の給付額の底上げをしなければ、この世代の老後の生活の不安が増大する。
今回の改革案にある、厚生年金の報酬比例部分と基礎年金のマクロ経済スライドの適用期間の一致で、国民年金加入者が受け取る基礎年金の額はどうなるのか。
ねんきん定期便や日本年金機構の見込み額試算で分かる受取額は、実際の受取額ではなく、現時点での算出基準によるものだ。
受取開始日までの名目賃金上昇率や物価上昇率の変動、マクロ経済スライドによる給付抑制が反映されているわけではない。
そこで、次ページでは、24年の財政検証で最も現実的なケースである「過去30年投影ケース」を前提に、上に挙げた変動要素を織り込んだ、国民年金加入者が本当にもらえる真の年金額を試算した。