年金制度大改革 損↓得↑徹底検証 #3Photo:PIXTA

日本商工会議所、経済同友会、連合……労使双方から廃止を求める声が上がる、いわゆる「主婦年金」第3号被保険者制度。年収の壁の元凶の一つともされるが、この制度は実は元からあったわけではない。特集『年金制度大改革 損↓得↑徹底検証』の#3では1985年の制度改正前の国民年金への任意加入や導入前後での制度変更の実態、第3号被保険者数などを基に存廃の是非を検証する。(ダイヤモンド編集部 竹田孝洋)

単身世帯、共働き世帯に比べて片働き世帯を
優遇しているとされる第3号被保険者制度

 専業主婦は保険料を支払っていないのに年金を受け取れるのはずるい──。こうした声がメディアやSNSなどで上がることは少なくないが、本当に「ずるい」のだろうか。現実の制度を見てみよう。

 民間企業に勤める、または公務員として勤めていて厚生年金に加入している人の配偶者は、配偶者自身が厚生年金に加入していない限り、配偶者でいる期間の保険料を負担することなく基礎年金を受け取ることができる。

 これがいわゆる「主婦(主夫)年金」といわれる第3号被保険者の制度である。

 第3号被保険者に対しては、日本商工会議所、経済同友会といった財界だけでなく連合からも廃止を求める提言が出されている。この件に関しては労使の意見が一致している。

 廃止を求める理由はまず、自営業など国民年金加入者や、独身や共働きの厚生年金加入者に比べて公平さに欠けるというものである。

 自営業など国民年金加入者の場合は、配偶者も国民年金に加入しないと基礎年金を受け取ることはできない。厚生年金加入者である第2号被保険者と第3号被保険者の夫婦は基礎年金を2人分受け取ることができる。

 一方、第2号被保険者と第3号被保険者の夫婦のうち第2号被保険者と同じ収入の独身の第2号被保険者は、厚生年金の報酬比例部分は同額だが、同額の保険料を支払っているにもかかわらず基礎年金を1人分しか受け取ることができない。

 また、夫妻そろって厚生年金に加入する共働き夫婦は、それぞれが保険料を支払っても各自1人分の基礎年金しか受け取れない。

 次なる理由は、働き控えの要因となり、第3号被保険者の大多数を占める女性の労働意欲をそいでいる、ということだ。

 本特集#2『【106万円の壁撤廃】それでも働き控えが続く理由、個人の年金保険料を会社が肩代わりすれば企業間格差が拡大へ』で取り上げたように、働き控えが生じる理由の一つは、労働時間が厚生年金加入の要件となる基準を超えると、保険料の負担なしに基礎年金を受け取ることができる第3号被保険者から、厚生年金保険料を負担する第2号被保険者となり手取りがぐっと減ってしまうからである。

 第3号被保険者を廃止し、第2号被保険者あるいは国民年金の保険料を支払う第1号被保険者に移行させれば、賃金の手取り額が減少したとしても保険料の負担のない状況には戻れないのだから、働き控えはなくなる。

 そもそも第3号被保険者という制度はどういう経緯で作られたのか。次ページでは、導入されたときの経緯、そして現況を検証する。