![儲かる農業2025 日本の夜明け#6](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/9/f/650/img_9fad3c78af9dc53f2bf31442317dc105574938.jpg)
1.5兆円超の最終赤字に沈む見込みの農林中央金庫の経営責任について、農協役職員の8割が、「現状の役員の責任の取り方では不十分」と考えていることが分かった。奥和登理事長の辞任を求める意見が大勢を占めていることも判明した。特集『儲かる農業2025 日本の夜明け』の#6では、ダイヤモンド編集部が実施した「農協役職員アンケート」の結果に基づき、「奥氏は辞任すべきだ」と考える農協関係者の割合や、ガバナンスなどに対する農協役職員の本音を大公開する。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)
連合会OBから「理事長の専横が過ぎる」との声…
元次官は、農水省の農中問題総括にダメ出し
全国に約500組織ある農協などから成るJAグループ内で、農林中央金庫に厳しい視線が注がれている。
大手銀行3行が2024年4~12月期決算で過去最高益となる約1兆円の純利益をたたき出す一方、農林中金は1兆4145億円の最終赤字に沈んだ。米国の金利の高止まりによって保有する米国債の価格が下落したためだ。
08年のリーマンショックの際、農林中金を含む大手金融機関は軒並み巨額赤字を計上したが、今回は農林中金の「独り負け」だ。その経営責任を問う声が、JAグループ内で高まっている。
農林中金は、財務の健全化のため、農協や県段階の信用農業協同組合連合会(信連)などに増資に応じるよう要請し、1兆4000億円強の資本増強を行った。農林中金に資本を提供することは、経営が苦しい農協などにとって大きな負担となった。
だが、農林中金の経営陣は十分な責任を取っていないように見える。25年3月期に5000億円超の純損失に陥る見込みだと発表した5月22日の決算会見の前日、農林中金は役員推薦会議(企業の指名委員会に相当)を開き、奥和登理事長の3期目(1期3年)の続投を決定。同時に、奥氏以外の役員も続投させた。
リーマンショック時に農林中金の理事長だった上野博史氏が、巨額赤字を計上して1兆9000億円の増資をせざるを得なくなった責任を取って潔く職を辞したのと対照的だ。
ダイヤモンド編集部は、農林中金に対して、表立って意見を表明する機会が少ないJAグループ関係者の本音を聞き出すため「農協役職員アンケート」を実施し、248人から回答を得た。
次ページでは、農林中金に対する農協役職員の不満や厳しい評価を大公開する。奥氏に辞任を求める農協役職員の割合や、役員報酬を3割カットするといったこれまでの農林中金役員の責任の取り方、ガバナンスに対する批判の声も明らかにする。