稲盛氏が不祥事でも決してやめなかったこと
信頼を損なう遅延は単なるミス以上の影響を持ち、短期間での回復は難しい。具体的な改善策の実行とその効果を示す長期的な努力が不可欠である。
謝罪要求の高まりと謝罪の意味の低下を解消するには、謝罪に加えて迅速なアクションが求められる。
遅延がプロジェクトの進行に影響を与えた場合、追加リソースの投入やスケジュールの再調整などの具体的な行動が必要となる。謝罪の内容も充実させるべきである。
「申し訳ありません」と伝えるだけでは不十分であり、明確な改善策や目標を含めることで謝罪が具体性を持つようになる。遅延の理由や背景を正直に説明することも重要である。
問題が起きた原因を説明し、関係者の理解を得ることで不満を和らげる効果が期待できる。謝罪を効果的にするには、言葉だけではなく行動や信頼回復への姿勢を明確に示す必要がある。
実は稲盛氏自身も、不祥事から大炎上を経験している。
1985年5月28日付の日本経済新聞には《京セラ株が低迷している。5月初旬に5000円を割り込み、13日には4600円まで下げた》《人工関節やコードレス電話機の無許可販売といった失態と、この株価低迷が重なって、ベンチャー企業の成功者として知られる京セラの前途にかげりが出た印象さえある》とある。
稲盛氏は謝罪に謝罪を重ねていったが、唯一、頑としてやめなかったことがある。
それは「積極営業」である。京セラの「行け行けドンドン」の営業姿勢が、当時の不正を生んでしまったとメディアから追及されたが、稲盛氏は「法の精神を遵守する姿勢が根底にあれば、それは積極営業として評価されるべきである」とした。だからこそ、冒頭の言葉のように、自身の心のあり方に正しくあろうとしたわけだ。
今後、フジテレビは女性アナウンサーを含め、若い女性社員を営業の会食に出すのは自粛することになるかもしれない。しかし、一般社会の通念として、社員が営業の会食に出すことに問題はない。女性社員の側から見ても、営業の現場から遠ざけられることは、男女の格差を新たに作り出す要因となる。
今後の営業現場により厳しいコンプライアンスを課すのは当然として、積極的な営業姿勢を捨てるのであれば、フジテレビに再生はないだろう。