●「適性検査」で精神面をチェック
近年、適性だけでなく、不適性発見のための検査が開発され、多くの企業で導入されています。例えば「不適性検査スカウター」※1では、うつ傾向、自己愛傾向、境界傾向、演技傾向、脅迫傾向などを測定します。これらは精神医学で定義される人格障害の特徴を基に開発された検査で、組織にとってリスクとなる可能性のある傾向を事前に把握することができます。また、「TAL」※2というストレス耐性や、メンタル疾患の発症傾向を測定する検査もあります。
いずれも、米国精神医学会が発行する「精神疾患の診断・統計マニュアル」である、DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)という、精神疾患の治療者、精神医学の研究者向けに精神疾患の基本的な定義を記したものを元に開発されています。DSMは世界共通の精神疾患の診断基準として用いられており、日本においても多くの病院で使われています。
これらの検査は、特に大企業では新卒採用でも導入されており、通常のSPIなどの適性検査と併せて実施されることが多くなっています。検査結果の解釈や活用方法は企業によって異なり、例えば総合評価のリスク度が一定以上の場合は機械的に不採用とする企業もあれば、個々の項目の特徴を面接での確認ポイントとして活用する、ある傾向の値について警戒するなど用い方はさまざまです。
●かつての勤務先関係者にあたる「リファレンスチェック」
リファレンスチェックは、候補者の過去の勤務先に働きぶりを確認する方法です。電話やメール、オンラインフォームなどを通じて、前職での上司や同僚、部下などに問い合わせます。しかし、この方法には2つの課題があります。
容易に想像できると思いますが、ひとつは、現職者の場合、まだ候補者の人がその会社にいるわけですから、当事者を介さずに情報収集することが難しいという点です。候補者本人に推薦者を指定してもらう場合、自分に好意的な評価をする人物しか選ばない可能性があります。すでに離職して、候補者を介さずに問い合わせる場合でも、極端に悪意のある評価が含まれる可能性もあるなど、必ずしも精度が高くない点にも注意が必要です。
●試用期間の前に「業務委託」で様子を見る
正社員採用の前に一定期間、業務委託をすることで、その人の能力だけでなく、組織の中での振る舞い方も含めて働きぶりをチェックする方法もあります。日本の労働法制では、正社員採用後の試用期間中の解雇は非常に困難です。そのため、採用の前段階で業務委託として働いてもらい、その後正社員として採用するという方法が有効です。
面接だけで見極めるのは危険で、以上に掲げた複数の方法を適切に組み合わせて活用することが必要です。
能力検査(NR): 言語理解や計算能力、論理的思考力などを測定。
資質検査(SS): 応募者の性格や行動傾向、意欲、ストレス耐性などを評価。
精神分析(SB): メンタルヘルスの状態やストレス要因、潜在的なトラブル要素を分析。
定着検査(TT): 応募者が組織に長期間定着する可能性を評価。
4つの検査を通じ、自社に適さない可能性のある人材を見極め、早期離職やトラブルのリスクを低減するのが目的。
※2株式会社ビビッド・ジャパンが提供する検査。文章と図形の2つの問題形式で構成される。文章形式では、 応募者の思考パターンや価値観を評価し、図形配置の問題では、複数の図形を組み合わせて特定のテーマに沿った配置を行い、創造性や直感力、ストレス耐性などを測定する。脳科学や統計学に基づいて開発されており、応募者のストレス耐性やメンタルの傾向、潜在的な特性を把握することが目的。