被子植物と昆虫は共生しながら同時に進化し互いに適応し合うことで、信じられないほどの多様性をつくりあげてきた。フランス本土だけでもハナバチが1000種もいて、世界に目を向ければ、受粉を媒介するハエが14万種、チョウとガを合わせて25万種も存在し、さらにそれ以上の種類の甲虫がいる。これらの昆虫は身を粉にして植物を助ける。ミツバチ1匹が1日のあいだに訪れる花の数は700にのぼることもあるという。

 このように昆虫は僕らのたくさんの食事の源にいるにもかかわらず、僕たち人間は昆虫に悲しい運命を課している。この30年足らずのあいだに、フランスの田園地帯に生息する昆虫の総量は80パーセントも減少した。しかも、それが農作物を守ろうとする人間のせいというのは皮肉なものだ。昆虫たちは、僕らから奪う以上に多くの植物を与えてくれる存在なのだから。

書影『ライ麦はもともと小麦に間違えられた雑草だった 食材と人類のウィンウィンな関係』(光文社)『ライ麦はもともと小麦に間違えられた雑草だった 食材と人類のウィンウィンな関係』(光文社)
ビル・フランソワ著、河合隼雄訳、山本知子訳

 実態がよくわからない数々の委員会、ロビー団体、行政機関などが、いまだに大量の農薬の使用を野放しにしている。農薬は、短期的に見れば単作農業(田畑で年に1種類だけの作物をつくる農業のこと)の生産性を向上させるかもしれないが、長期的には生態系の食物連鎖全体を脅かす。

 最後にコガネムシを見たのはいつだろう?その昔、コガネムシはあまりにたくさんいて、そこから抽出した油を機械の潤滑油にしたほどだ。いまでは、夏の夜に電灯にぶつかるコガネムシを見ることはめったになくなった。

 たしかに、昆虫がもたらす被害をある程度抑えることは不可欠だ。だが、昆虫は、すべての鎖の輪が重要である生態系の一部をなしている。誰かにとって有害な存在でも、別の誰かにとっては必要なのである。