皆が口をそろえて絶賛するのが、日本ならではの「体験」をした時です。お茶、座禅、武士道、料理、お寿司を握る、そば打ち、陶芸、茶碗を焼く、書道など。中には怪しいものもありますが、そうした体験ができることを楽しんでいます。

 そういう外国人向けに提供される体験アクティビティが、ものすごく増えていますね。インバウンドが体験に使う金額の割合も増えていると思います。日本酒の試飲も外国人にウケています。

『ニッポン巡礼』書影『ニッポン巡礼』(2020年、集英社新書)

――逆に、外国人が日本に対してネガティブな印象を持った、残念に思った話は聞いたことがありますか?私が聞いたのは、英語を話せる人が少なすぎることです。

 それは確かにあります。観光業で英語ができる人材が不足している。外国人観光客が自由に細かい話をしたときに、対応できる日本人があまりにも少ない。ホテルのフロントでも決まり文句以外で、英語対応できるスタッフが少ない。

 もう一つは、融通が利かないことです。例えばメニューにないことをオーダーすると、「やっていません」と言われる。水に氷を入れて出している、ホットティーはメニューにあるのに、「アイスティーをお願いします」と言っても、それがメニューになければ、「出せません」と言われる。融通が利かないことが、日本のおもてなしのマイナス面です。

 昔から日本の観光のスタイルは消極的です。旅館に泊まると、料理から何から全て決まっているから、それを受ければいいだけ。それ以外は、遠慮して頼まない。

 外国人は欲しいものをどんどん言います。ちょっとの工夫で対応できることもあるのに、インバウンドに慣れていないケースだと拒否反応を起こすスタッフもいます。大きなホテルでも、イライラする外国人客は見受けられます。

――融通が利かないというのは、日本人の国民性もあると思います。

 中国人、インド人、欧米人は、負けないしつこさをもっていて、「なぜそれができないのか?」と言います。私が日本人ガイドにレクチャーする際、外国人客に何か特別な頼みごとをされたら、最初から拒否しないで、「何か別の方法でできないか考えてみる」ことを教えます。

 考えてみた、トライしてみたけれどもやっぱり出来ない、などと理由を説明した上で「ノー」というのは別にいいんです。けれど、「うちのシステムとしてできない」というのは、返事になりません。相手のニーズを考え合わせるのが、本当の「おもてなし」ではないでしょうか。

インバウンドがあ然…日本の美しい景観をブチ壊す「最悪の戦犯」とは?
インバウンドがあ然…日本の美しい景観をブチ壊す「最悪の戦犯」とは?米国生まれ。1964年初来日。 少年期に体験した日本の美しさと失われゆく現状を国内外に訴え、次代へ残すべく、文化芸術活動の推進、講演、執筆活動などを行い、日本各地に残る美しい風景と文化を守り伝える事業を推進。著作に『美しき日本の残像』(朝日新聞出版)、『犬と鬼』(講談社)などがある。