今指摘した箇所は全体の平均値となる部分だが、ハウスメーカーによっても不具合の指摘率に差異がある。
まずは「大手」として知られるハウスメーカーを見ると、全体的に不具合指摘率が平均より低い傾向にある。
特に注目すべきは、型枠検査の34.6%、防水検査の38.9%という数値だ。これは、過去の施工トラブルのデータや顧客からのフィードバックを基に、基礎の形状不良や雨漏りといった、住んだ後に大きな問題となりやすい箇所への対策を強化してきた結果だと判断できる。基礎工事については、位置の間違い、配筋の本数・場所の間違いなど、後から修正が困難な重大なミスを防ぐための対策が進んでいる現れとも言えよう。
一方で、断熱検査は42.1%と準大手ハウスメーカーよりも高い数値を示しており、省エネ性能については、まだ改善の余地があるのかもしれない。さらに、構造検査でも53.8%と半数以上で不具合が指摘されており、耐震性に関わる部分についても100%安心とは言えない状況だ。
次に、準大手ハウスメーカーだが、全体的に平均並みの数値を示す中で、断熱検査が37.9%と突出して低いのが特徴的だ。これは、近年の省エネ住宅への関心の高まりを受け、他社との差別化を図るために断熱性能に力を入れている結果と考えられる。しかし、配筋検査は57.1%、構造検査は69.8%、防水検査は64.1%と不具合の指摘率が平均よりも高い傾向が示された。
最後に、工務店などの「その他」の区分では、全体的に平均値に近い数値だが、技術力や品質管理体制に大きなバラツキがあるのが現状だ。高い技術力を持つ工務店が存在する一方で、残念ながら改善が必要な工務店も含まれているため、数値はあくまで平均値である点は考慮しておきたい。いずれにしても、このデータが示すように、新築住宅の品質を向上させるためには、業界全体での取り組みが不可欠であると言えるだろう。
もし現場で不具合が発見されたら?
判断が難しいケースも
不具合の指摘率が「7割」という結果だけ見ると、新築住宅への不安を感じる方もいるかもしれない。しかし、見方を変えれば、工事中に不具合を発見し、是正できる機会がそれだけあるという裏返しでもある。
そして、実際に不具合が見つかった場合、その多くは対応がされていることもお伝えしておきたい。これは、私たちホームインスペクターが第三者検査機関として、建築基準や施工基準に基づいた客観的な視点で検査を行うため、指摘内容に正当性があるからだ。施工会社も、指摘された不具合を放置すれば、後々大きな問題に発展する可能性があることを理解しているため、速やかに直してもらえる。
ただし、建築の世界には明確な基準がなく、判断が難しいケースも存在する。そのような場合、専門家であるホームインスペクションが施工会社に対して詳細な説明を求め、納得できる根拠が示されるかを確認する。もし、根拠が不十分であれば、再度対応を求めることもある。完成後には見えなくなってしまう部分だからこそ、工事中にしっかりとチェックし、問題があれば適切に対処することが、長く安心して暮らせる住まいづくりには不可欠だからだ。