メタ認知がうまく機能していないと伸び悩みがちとなる

 そこで重要となるのが、自分を振り返る心の習慣を身につけさせること、いわゆるメタ認知が機能するように促すことである。

 メタ認知という言葉はあまり聞いたことがないかもしれないが、自分自身の認知活動についての認知がメタ認知である。勉強や仕事などで頭を使うのは、まさに認知活動である。仕事に関していえば、仕事をするという自分の認知活動を振り返り、その現状をモニターすることにより、問題点を把握するのがメタ認知の働きといえる。

 例えば、自分の仕事のやり方や成果に関して、ちゃんとできているか、成果を上げているか、誰かに負担をかけていないか、どこかでつまずいていないか、よくわかっていないことはないか、どんな点でミスを犯しやすいか、もっとできるようになるために改善すべき点はどこか、などと振り返ってチェックするのがメタ認知である。

 メタ認知がうまく機能していない場合は、たとえば勉強であれば、自分の勉強の仕方に問題があっても、それに気づくことができず、不適切なやり方を続けるため、成績の向上が期待できない。

 仕事であれば、メタ認知が適切に働いていれば、自分の仕事のやり方のどこはうまくいっているが、どこに問題があり、どのように改善する必要があるかがわかるため、そこを改善するための対処行動を取ることができる。それによって仕事力が向上していく。

 先の事例の人物の場合、できるようになりたいという意欲は非常に強いにもかかわらず、仕事力がなかなか高まらず、伸び悩んでしまっている。そこでの問題は、このメタ認知が機能していないことにあると考えられる。

 目の前の仕事に没頭することは大切だし、その点に関しては、問題は感じられない。だが、がむしゃらに仕事に向かっているだけでは、どこかで伸び悩んでしまう。仕事にまだ慣れないうちは、それも大事だが、ある程度慣れてきたら、さらなる飛躍が求められる。そこで必要になるのがメタ認知である。

 自分の仕事のやり方のまずい点を改善したり、能力開発が必要な点を意識して強化したりするためには、一歩退いて、自分の仕事ぶりを振り返ってみる必要がある。そうした姿勢が欠けているのが問題といえる。