日本製鉄の蹉跌 鉄鋼 世界大乱戦#3Photo:John Foxx/gettyimages

日本製鉄による米USスチール買収交渉が正念場を迎えている。だが、日鉄が突破すべき壁は米国だけでなく、インドや東南アジアにも立ちはだかっている。中国勢の猛攻などにより、橋本英二会長兼CEOの悲願である「1億トン・1兆円計画」達成のハードルがさらに高まっているのだ。特集『日本製鉄の蹉跌 鉄鋼 世界大乱戦』の#3では、日鉄のグローバル戦略を徹底解剖し、日鉄が宿願達成のために克服すべき課題を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

米国・インド・ASEANの3本柱で世界戦略を強化
日鉄の重要拠点は米国だけじゃない!

 国内鉄鋼最大手の日本製鉄による米USスチールの買収交渉がクライマックスに差し掛かっている。本特集の#2『日本製鉄が「米大統領を提訴」で狙う形勢逆転シナリオ!労組や米鉄鋼大手が反対するUSスチール買収への訴訟戦略』で述べた通り、これを実現できれば日鉄の橋本英二会長兼CEO(最高経営責任者)が社長時代から掲げてきた「グローバル1億トン」に向けて大きく前進できる。

 だが、日鉄が強化しようとしているのは米国事業だけではない。インドとASEANを合わせた3本柱で海外事業の急成長を図っているのだ。国内市場が縮小する中、年間粗鋼生産能力1億トンに加え利益水準1兆円の大台も狙う日鉄にとって、グローバル展開の加速は不可欠だ。

 しかし、米国以外のエリアでも突破すべき壁がそびえる。世界最大の生産量を誇る中国勢が各地に猛攻を仕掛けている上、インドでは日・韓・欧の鉄鋼大手と現地メーカーが入り乱れ、戦いは苛烈を極めている。

 世界各地に進撃を続ける日鉄に立ちはだかるのは、どんな苦難だろうか。

 次ページでは、日鉄のグローバル戦略を徹底解剖し、宿願達成のために克服すべき課題を明らかにする。併せて、「トランプ関税」の打撃が日鉄に与える影響にも迫る。