プライベートエクイティ 金融最強エリートの正体#9Photo by Yasutaka Nagayoshi

ベネッセホールディングスが昨年5月、MBO(経営陣による買収)により上場廃止した。創業家の福武家がそのパートナーに選んだのが、欧州のプライベートエクイティ(PE)ファンドのEQTだ。米系がPEファンドの主流を占める中で、2021年に日本に進出したばかりのEQTを、なぜ福武家が選んだのか。特集『プライベートエクイティ 金融最強エリートの正体』の#9で、EQTパートナーズジャパンの丸岡正会長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

スウェーデンの産業投資家が
KKRの「画期的」買収に驚愕

──EQTは2021年に日本法人を設立しましたが、どのようなファンドなのでしょうか。

 1994年設立で31年目のファンドです。創業の地は、現在も本社があるスウェーデンのストックホルム。ユニークなのが、その生い立ちです、

 19世紀の半ば、スウェーデンにウォーレンバーグという、日本でいえば渋沢栄一のような人がいた。祖業の銀行からスタートし、2度の世界大戦を経て世の中が工業化されていく中で、ウォーレンバーグ家は産業投資家としてさまざまな企業に投資をしました。事業が拡大していく中で、ウォーレンバーグ家の資産を運用する目的でファミリーオフィスも設立されました。

 1980年代後半、たまたま私も駐在していた米国で、画期的な出来事が起きた。KKRによるRJRナビスコ(当時)の買収です。金融機関から資金を調達し、少ない自己資金で数兆円規模の大企業を買収するレバレッジド・バイアウト(LBO)で、第1号の大規模案件でした。

 それまでの常識では考えられない大型買収にウォーレンバーグ家は「一体何が起きているのか」と驚いた。そこで若い社員を米国に派遣してLBOを研究し、94年に欧州でプライベートエクイティ(PE)ファンドのEQTを始めたのです。ちなみにこのときに派遣された若い社員が、今のEQT会長です。

スウェーデンの財閥の系譜を受け継ぐEQTは、1980年代に米国で起きたM&Aを契機にPEファンドを立ち上げた。今やグローバルで1900人以上の従業員が在籍し、世界最大級の運用資産額を誇るEQTが日本に進出し、第1号案件として手掛けたのがベネッセホールディングスのMBOだ。その舞台裏と日本での投資計画を、次ページで丸岡氏が明らかにする。