プライベートエクイティ 金融最強エリートの正体#12Photo by Yoshihisa Wada

中小企業との資本提携やM&Aに特化し、2021年に設立された新興ファンド、マラトンキャピタルパートナーズ。総額113億円の1号ファンドに続き、2号ファンドでは340億円もの資金調達に成功。創業からわずか4年で急成長を遂げている。だが一方で、同社の投資手法に業界内では、中小企業を安く買いたたく“転売ビジネス”との批判もくすぶる。特集『プライベートエクイティ 金融最強エリートの正体』の#12では、小野俊法代表に一部批判に対する見解と今後の展望を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

PEファンドは中小企業を敬遠
ブルーオーシャンだと確信

――2021年に中小企業との資本提携に特化したマラトンキャピタルパートナーズを立ち上げました。なぜ、スモールキャップ領域でプライベートエクイティ(PE)ファンドを設立しようと考えたのですか。

 私は不動産ファンドでの勤務経験に加え、自ら立ち上げた企業を海外でイグジットさせた実績があります。前職では中小企業を対象とするPEファンドに在籍していました。

 前職で実感したのが、多くのPEファンドが中小企業は手間がかかると考え、敬遠しているという事実です。しかし、組織体制や支援の仕組みを整えれば、むしろこの領域には未開拓のブルーオーシャンが広がっている。そう確信し、独立に踏み切りました。

 実際、スモールキャップ市場には大きなポテンシャルがあります。日本のGDP(国内総生産)の約半分は中小企業に支えられていますが、PEファンド市場においてスモール・マイクロキャップ市場に流入している資金は全体のわずか5%程度。本来なら経済規模に応じてPEファンド全体の2~3割程度の資金がこの領域に入っていてもおかしくありません。つまりこのマーケットには、まだ4~6倍の成長余地があるということです。

 私たちが取り組んでいる中小企業支援では、事業承継の現場に一定の共通課題が見られます。例えば、経営者の高齢化、後継者不在、属人的な組織運営などは、ある程度パターン化されており、対応の標準化が可能です。だからこそ、体制さえ構築できれば、スター人材に依存することなく、再現性のある成果を出せると考えています。

 私は不動産ファンド出身ですが、不動産の世界では小規模案件を束ね、一定のスキームに基づいて効率的に運用する手法があります。この考え方を企業投資に応用しているのが、当社のモデルです。

――しかし、業界内ではマラトンの手法に対して、多くの中小企業を安く買いたたき、社長を形式的に交代させた上で、短期間で売却し利益を稼ぐ“転売ビジネス”だと批判する声もあります。こうした見方に対して、どう答えますか。

マラトンを巡る“転売ビジネス”批判に対し、小野代表は次ページで正面から反論。さらに今後、3号ファンドで700億~1000億円、4号ファンドで1400億~2000億円規模を見込む中、ミドルキャップやラージキャップへの展開についても考えを聞いた。