
プライベートエクイティ(PE)ファンドの世界的大手が米ブラックストーン・グループだ。日本のPE市場に進出したのは2018年で、競合のカーライルやKKR、ベインキャピタルより遅い。だが、それでも勝算があると、坂本篤彦 ブラックストーン・グループ・ジャパン代表は言う。特集『プライベートエクイティ 金融最強エリートの正体』の#8で、その投資戦略を明らかにする。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
ブラックストーンCEOが石破首相に面会
資産運用立国の取り組み継続を要請
──米ブラックストーン・グループのスティーブン・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)が3月に来日し、石破茂首相と面会しました。
シュワルツマンは、岸田文雄前首相が始めた「資産運用立国」をちゃんと継続するんですよね、という確認をしたかったのだと思います。
「世界中の投資家が日本を見ています。日本を再発見しようというモメンタムを維持したいと思うのであれば、資産運用立国の取り組みを続けていただきたい」。そんな話をシュワルツマンから石破首相にさせていただいた。
それに対し石破首相は非常にポジティブに答えていただいたというふうに思っています。
──ブラックストーンは、そのシュワルツマン氏が1985年に創業しましたが、日本では不動産投資のイメージが強い。プライベートエクイティ(PE)投資の実績と戦略は。
ブラックストーンは世界最大級のPEファンドです。各社の開示資料によれば、KKRさんの預かり資産が96兆円、カーライルさんが66兆円、ベインキャピタルさんが28兆円なのに対し、ブラックストーンは169兆円です。
橘田(大輔 ブラックストーン・グループ・ジャパン代表)が以前のインタビューで、日本の不動産投資に幾ら投じるかを聞かれた際、「できる限りやっていく。1兆円でも買えるなら買う」と答えました(『西武HDの「東京ガーデンテラス紀尾井町」を4000億円で買収!米ブラックストーンが狙う次の不動産は?』参照)が、それはPE投資も同様です。
ただ歴史的に見たときに、かつて日本のPE市場は非常に小さかった。ブラックストーンの投資先としては、ある程度の規模の投資を継続的にできる市場でなければならない。正直に申し上げると、日本は市場として魅力があるのかという議論を、社内でしばらく行っていました。
カーライル、KKR、ベインが日本のPE市場に進出した2000年代、ブラックストーンは不動産をまずやろうということになりました。不動産投資は外国人でもできますが、企業に投資するPE投資は人や文化や技術に関わる。本当に日本がそれを受け入れるのかどうか、少し様子を見ようというのが背景にあったと思います。
そして2015年ごろから日本企業が変わりつつあり、PE投資を受け入れる市場になってきたことを確認し、ブラックストーンは18年に日本のPE市場に進出したわけです。
18年に日本のPE市場に進出したブラックストーンは24年以降、臨床試験(治験)支援大手のアイロムグループや、電子コミック「めちゃコミック」配信を手掛けるインフォコムなどへ投資を加速させている。これまでの投資先はヘルスケアとテクノロジーの領域に限定しているが、「第三の柱」となる新たな領域への投資を狙っていると、坂本氏は明かす。