プライベートエクイティ 金融最強エリートの正体#15Photo:kuppa_rock/gettyimages

裁量が大きく、高報酬で知られるプライベートエクイティ(PE)ファンド。そんな華やかなイメージの一方で、週5日の地方出張や“席の空き”次第で決まる昇進など、意外な現実もある。特集『プライベートエクイティ 金融最強エリートの正体』の#15、匿名座談会・後編では、現役社員がリアルな年収水準、起業やCFO(最高財務責任者)転身などキャリアの悩み、実力主義に見えて実は運要素の大きい昇進構造を率直に語る。(聞き手/ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

PE社員が語る働き方の現実
平日は週5日地方出張も

――皆さんは普段、どんな働き方をしていますか。

伊達 私の場合、業務時間の使い方は既存案件が約7割、新規案件が3割ほどです。新規案件に時間をかけない時期は朝8時半に出社し、19時半退社。夜は自宅で資料作成に当たることもあります。

徳川 この業界の特徴は、業務時間よりも裁量の大きさにあります。スケジュールは基本的に各自の裁量に委ねられていて、業務配分も自分で決めます。管理されない分、忙しくても納得して働ける。その自律性が魅力です。

 一方で、地方企業との関わりが多く、移動負担は軽くありません。前職のプライベートエクイティ(PE)時代は週4日が出張で、全国を飛び回っていました。新幹線移動で体はバキバキ。家庭からのプレッシャーもあり、30代後半でこの働き方を続けるのは無理だと痛感しました。

 そんな経緯もあって、今の自己勘定投資の会社では「投資先は1都3県限定」とルールを設けています。それ以外には原則手を出さない方針です。

毛利 私は、徳川さんが“避けた道”を地で行っています(笑)。中小企業の支援では、信頼できる経営人材を招き、組織に自然に溶け込ませる体制づくりが欠かせません。その基盤を作るには、やはり現場に足を運び、対面で信頼を築く必要があります。

――出張頻度はどれくらいですか。

毛利 平日は基本的に全国各地の投資先拠点を行脚しています。

石田 私も担当案件は全て地方です。たとえ短いやりとりでも、ほんの一言を伝えるためだけだったとしても、飛行機に乗って現地に行くことが多いです。対面で面談して、夜には東京に戻って業務というのも日常茶飯事です。大切なことは対面でお話しする、こういう小さい積み重ねでしか信頼は築けないと思っています。余談ですが、手土産を持参するのも欠かせません(笑)。

――そんな働き方をしている皆さんの年収も気になります。前職と比べて、年収はどれくらい増えましたか。

年収800万円から、たった5年で2000万円へ。PEファンドの高報酬は魅力的だが、成功報酬(キャリー)が大きく出るのはごく一握りで、昇進は“席の空き”次第という現実もある。報酬と出世の実態について、現役社員が本音を語る。