コミュニケーションは
「テキスト」中心に工夫

 もう一点、大きいのは、コミュニケーションは主としてテキストベースであることだ。打ち合わせや電話が苦手、雑談が苦手、騒音や臭いに敏感で公共交通機関に乗るのが難しいなど、様々な発達特性を考慮している。

 社員間のコミュニケーションについては、各自が適したコミュニケーション量を選べるようになっている。業務連絡はMicrosoft Teamsを使用しているが、社員から「雑談にはTeamsだと堅苦しい」という声があり、チャットサービスのDiscordも導入した。

「黙々と仕事したい人は最低限のやり取りだけで済ませることもできるが、交流したい人はDiscordを使って、各人が趣味の部屋を持つこともでき、『ゲームの話をしよう』と盛り上がることも可能だ」

「これが障害者雇用の職場?」日揮グループが作った“フルリモート×納期なし”の異次元チーム「対面でのやり取りが必要な時は、日揮グループのオフィスや外部施設に参集している」と説明する阿渡社長 撮影:ダイヤモンド・ライフ編集部

 オフィスがない環境ではあるが、孤立しないよう、希望制で1対1の面談も行い、業務上の悩みを聞いて解決する。対面での定例の交流として、年1回全員で集まって研修を行い、四半期に1回の面談や月1回の業務報告会を実施している。人間関係を固定化せず、業務外でのつながりも大切にしている。

 同時期に入社した社員同士で「同期」という繋がりもできる。入社時の研修で一緒に学ぶことで、自然と横のつながりが生まれるという。

 具体的な業務内容は、社内システムのWebアプリ開発やAI活用など日揮グループ内のIT業務支援が中心だ。技術支援も充実している。社員が新しい技術を学びたいと思ったら、学習ツールのUdemyを利用し、自己研鑽できる環境を整えている。また、Discordで技術的な質問をすれば、誰かが答えてくれる文化も醸成されている。

 21年の設立当初からこうした体制が完成していたわけではなく、これらの工夫は社員からの提案で少しずつ改善を重ねて実現したものだ。