自社の採用ではもっと違うことをやりたいと考えていたところ、IT特化型の就労移行支援事業所を見学する機会があった。そこでは障害のある人々がプログラミングをしており、そのアウトプットを見て両氏は、「すごい、これを事業にできないかと思った」と言う。これがJPT設立のきっかけだ。20年頃に特例子会社設立を構想し、障害者雇用の改善とIT人材不足という2つの課題の解決に挑むことになった。
では具体的にどのようにして採用が実現したのか。
1カ月間、開発にトライする
インターンシップを試行
まず、インターンで試行した。「こういうことができますというインターンを受ける方のポートフォリオを見せ、現場にヒアリングしてIT化したい業務をピックアップ。それを障害のある人何人かに渡し、1カ月間、開発にトライしてもらった」(阿渡氏)。
例えば、プラントの配管内の目視作業をAIを使って自動判定するシステム。マイクロソフトのPower BIを使った社内情報の閲覧状況を可視化するツールなどを開発してもらい、実際にそのシステムを使う現場に見せたところ、成果物はいずれも非常に好評だった。
社内にデータはたくさんあるが、可視化したり解析を自動化できていなかったりするものがまだまだ山のようにある。それが主な仕事になる。これならいけると確信し、21年1月に「IT×障害者雇用」を標榜するJPTを設立した。
障害者雇用とIT人材不足の課題解決が絶妙なタイミングで重なったのだ。「大企業で新会社を作るのは大変なこと。たまたまこの二つの課題がうまく噛み合い、『作らざるを得ないね』と本社も納得してくれた」。日揮グループが上司に相談しやすい風通しのよい社風だったこともかれらを後押しした。
ただ、その時は、発達障害の人を中心に採用するとは想定していなかった。どういうスキルがあるのか、何ができるのか、そして日揮で活躍できそうかという観点で採用していたら、たまたまそういう人たちが集まったという。