当初2〜3倍だった応募倍率は
今や7倍に急上昇

 JPTの採用は年2回、4月と10月入社に向けて行われる。全国のIT特化型就労移行支援事業所を中心に声をかけ、当初2〜3倍だった倍率は現在は7倍にものぼる。応募者のレベルが格段に上がってきており、阿渡氏たちはうれしい悲鳴を上げている。「正直なところ採りきれなくてもったいない」くらいだという。技術力が高い人がいても、JPTのような働きやすい環境はないため、就職先がない人が多い。

 採用プロセスはまず4週間のインターンで、実際の業務に近い課題を手掛けてもらい技術力を見ることから始まる。AIとWeb系の二つの課題のいずれかを選ぶ。課題は意図的に難しくし、100時間の制限内でどう優先順位をつけて取り組むか、その思考プロセスを見て評価する。

 最終面接では、自己の障害特性に対する理解度を重視している。ある程度「自走」できる人でなければ、管理者が少ないJPTでは管理コストがかかりすぎてしまうからだ。自分の特性を理解し、調子が悪くなったときの対処法を考えられているかを確認することで、ミスマッチを防いでいるという。

 21年1月の会社設立後、第1期生として6名が入社し、その後毎年10名前後を採用してきた。現在は46名。即戦力が3〜4割、「伸びしろ」としての採用が5〜6割。未経験者も採用対象にしている。「学生など、職歴がなくても、IT好きでプログラミングが趣味の人が多い。仕事を任せるとしっかりとこなしてくれる」。その半面、ビジネス文書の作成など苦手なこともある。

 仕事上のパフォーマンスはどうなのか。「仕事スピードは一般企業より速いとクライアントから言われる。案件の7〜8割は『もうできたの?』『確認するのが大変なくらい早い』と驚かれるほど」と阿渡氏は胸を張る。特性を生かして集中して取り組める環境だからこそ、成果が出ているのだ。

「多くの社員はITへの強い興味があり、好きなことや興味があることへの没頭力を持っています。好きなことだから、自分から進んで深く取り組める。これは大きな強み」

 退職者は今まで4名だが、そのすべてが契約満了によるもので、自己都合退職は今のところない。契約満了で終わるのは、本人が障害と向き合えていない場合だ。

 例えば、家で働くよりも外で働きたいといって、全国を転々とした結果、疲れ果てて体調を崩し、結局仕事ができなくなった人がいた。このような場合は、「自己の特性理解ができていないと判断し、当社で仕事を続けるのは難しい」

 基本的には「生活管理」の部分で課題がある場合が多く、スキル不足で契約終了になるケースはまずない。技術面の課題は、学習ツールの提供や社内でのQ&Aサポートで補えるからだ。