国立精神保健研究所の統合失調症の主任研究者であるローゼンタールは、この催しの主催者の1人だったが、サイコセラピー陣営も、イェール大学の精神医学者で家族の動的な関係性研究の先駆者セオドア・リッツを筆頭に、有力な代表者を送り込んでいた。
今やローゼンタールはこのドラドビーチで、最初の研究結果を発表する準備ができていた。そしてその研究結果が、育ちではなく生まれがこの論争に勝つという証拠となるように、彼には思えた。
ローゼンタールと国立精神保健研究所の研究部長のシーモア・ケティは、自分たちの調査のサンプルをデンマークで見つけた。デンマークは、素晴らしい医療記録管理と、そうした記録を科学研究に進んで提供する意欲のおかげで、多くの遺伝学研究者に崇められるようになった国だ。
2人は、養子になって、それから統合失調症を発症した人々の記録を調べることができた。続いて、彼らを養子にした家族の健康記録を徹底的に調べ、相関を探した。精神疾患のある養子の多くが、精神疾患が多発している家族に、たまたま引き取られている可能性を排除するためだ。
最後に2人は、養子たちを対照群(生まれた家庭で育った統合失調症患者)と比較した。
最終目標は、生まれと育ちのどちらの筋書きが、より多くの統合失調症の発生につながるかを確かめることだった。
結果は大差だった。記録された症例が、ほとんど1つ残らず、統合失調症の病歴のある人々との近接ではなく、生物学的特性と結びついていた、とローゼンタールはドラドビーチで断言した。
発症のカギは“遺伝的素因”?
養子研究の結論は
どこで育ったかや、誰に育てられたかは、まったく関係がないように見えた。全体として、統合失調症の病歴がある家族は、そうでない家族の4倍も、この疾患を未来の世代へ伝える可能性が高かった。依然として、親から子へと直接この疾患が伝わることはめったになかったにしても、だ。
この結論は、統合失調症が家系を不規則に伝わって行くことと、大いに辻褄が合った。そして、これだけでも驚くべきことだっただろう。