表面処理技術を徹底的に解明し知財戦略で高収益体制を構築

従業員30人の町工場にあって、世界でトップシェアを誇る技術や自社製品を擁す。2014年には第1回「グローバルニッチトップ企業100選」(経済産業省)に選定され、大手企業も一目置くのが、埼玉・所沢市のワイピーシステムだ。

表面処理技術を徹底的に解明し知財戦略で高収益体制を構築代表取締役 吉田 英夫氏

 同社は1987年、表面処理メッキ専業として創業。価格競争を強いられやすいメッキ事業で、いかに競争優位を築いたのか。そこには、同社代表取締役・吉田英夫氏の表面処理技術に対する飽くなき探究心と考え抜かれた知財戦略がある。

「創業から十数年、下請け構造からの脱却を図る中で気付いたのが、そもそもメッキ技術の本質的な原理がわかっていないのでは、という根本的な課題でした」(吉田氏)。多くの受託業者が同じ状況にあるとするなら、ここに差別化のチャンスがあると考え、東京農工大学大学院に44歳で入学、工学博士となった。「メッキの無公害化を目指し、取り組んだ研究がNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)地域コンソーシアムに採択されたことが、転換点となりました」と言う。

二酸化炭素を使った
画期的な防災具を開発

表面処理技術を徹底的に解明し知財戦略で高収益体制を構築メッキと塗装の長所を兼ね、RoHS指令にも寄与する低温黒色クロム(CBC処理)施工例

 同研究で廃液を出さない超臨界メッキ技術を発明し、03年、工学博士号を取得。その後も政府機関、大企業、大学などの研究機関と連携した研究開発を進め、100余りの特許を保有している。

 現在、金属表面処理、受託研究開発、防災関連機器の3事業を展開。創業事業の金属表面処理部門で、世界トップシェアを誇るのがメッキの防錆性と塗装の防食性を兼ね備えた低温黒色クロム(CBC処理)技術だ。被膜に残る有害な六価クロムイオンを電解抽出で除去する機能も付与した特許技術で、「半導体・液晶関連製造装置、光学機器など、あらゆる産業の課題解決に貢献する技術として採択いただいています」(吉田氏)。