
もう一つのグローバルニッチトップ認定商品が、自動車用緊急脱出機能付き小型二酸化炭素消火具「消棒RESCUE」だ。同商品は、先のメッキ技術の無公害に向けた研究から生まれた消火具「消棒」シリーズの一つだ。「超臨界流体で使われる二酸化炭素を活用し、排出量削減に貢献できないかという課題認識が製品開発の基点となりました」と吉田氏。
開発に当たっては、経産省施策「中小企業新事業活動促進法〈新連携〉」の全国第1号認定を得て推進。従来の消火器のように水分や粉体ではなく、二酸化炭素ガスで消火するため、電気火災やエンジンルーム火災の初期消火にも有効で、周りを汚すこともない。消火機能だけでなく、水没事故などに備えた車の窓ガラスを割るためのガラス破砕機能やシートベルトカッターといった自動車用緊急脱出機能を搭載しているのも特徴だ。
大企業・関係省庁と連携
新たなJIS認定を実現

消火防災関連製品は消防法令によって厳格な基準が定められているが、「昨今の自動車事故の傾向に鑑み、消防法令を順守しながら、法令に記載のない新たな機能を付与した画期的な製品作りを目指しました」という。関連省庁の同意を得て、規格作り、認証機関の決定から着手。経産省「新市場創造型標準化制度」によるJIS認定第1号となり、大手自動車メーカーの純正品に採用された。規格化から手がけ、新市場の形成、商業ベース化までなし得たのは、産学共同研究のフロントランナーたる同社ならではといえよう。
今後注力するのは、先端的分野が21年に特許化した、カーボンナノチューブ(CNT)を高密度に定着させる表面処理技術だ。CNTの特性により素材の表面に導電性を持たせることで、船舶や航空分野などでの実用化が期待される。
約1年半後を予定する事業承継に向けた準備も進めつつ、未知の領域に貪欲に挑み続ける同社。独立独歩を目指す中小メーカーの在り方として参考にしたい。
(「しんきん経営情報」2024年5月号掲載)
従業員数:30人
売上高:6億円(2024年8月期)
所在地:埼玉県所沢市牛沼607‐6
電話:04‐2968‐5700
URL:yp-system.co.jp