年収300万円台の新人テレビマンが、六本木の合コン宴会・ホテルの豪華接待よりも「快感を覚えた出来事」写真はイメージです Photo:PIXTA

私は20余年にわたりテレビ局に勤務してきた。テレビ局とはどんなところで、テレビプロデューサーの仕事とはいったいどんなものなのか?本書にあるのは私が実際に体験したことである。※本稿は北慎二『テレビプロデューサーひそひそ日記』(三五館シンシャ)の一部を抜粋・編集したものです。登場するテレビ局や人物など固有名詞の一部は仮名です。

某月某日 買い付け
友情の証として…

 テレビ上方は慢性的な人手不足だった。部署間の垣根も低く、私は編成部でありながら、広報の手伝いで映画会社の資料をもとにラテ欄の紹介原稿(*注釈は記事末に列記、以下同)などを書いたりしていた。

 ある日、私は「購入担当」に指名された。購入担当とは、新作ではない映画やアニメの買い付けを行なう仕事だ。

 当時のテレビ上方には「購入枠」といわれる放送枠が数多くあった。自社で制作する力がないため、購入してきた番組で放送枠を埋めるわけだ。平日の月曜~金曜は朝のアニメ枠、昼すぎの映画枠、夕方のアニメ枠、深夜や土日の映画枠……そのほかの枠も含めると1週間に30 本近くの購入番組枠があった。ほかのローカル各局とくらべても異常な多さだった。

 各局の購入担当(*)は長期にわたりその仕事を続けている人が多く、名物購入マンと呼ばれる人もいた。それがテレビ上方では新人の私がひとりで担当することになる。

 初めて自分で購入したアニメシリーズは「タイガーマスク」。日本のアニメ制作会社が作った作品の国内販売権をどういうわけか外資系の会社が持っていた。

 夕方のアニメ枠用に、1本6万円で50本、総額300万円で購入した。アニメシリーズの選定はやりやすい。子どものころに見て内容を知っている作品が多いので、「これならこの時間帯に視聴率をとりそうだ」という感覚がつかめる。