まるで神ワザ!テレビ局の新人が感動した「つまらんロケ」が「オモシロ番組」に変わる劇的瞬間写真はイメージです Photo:PIXTA

今、テレビ業界の裏側、そしてテレビプロデューサーの「裏の顔」が世間の注目を集めている。私は20余年にわたりテレビ局に勤務してきた。テレビ局とはどんなところで、テレビプロデューサーの仕事とはいったいどんなものなのか?本書にあるのは私が実際に目撃し、また体験したことである。※本稿は北慎二『テレビプロデューサーひそひそ日記』(三五館シンシャ)の一部を抜粋・編集したものです。テレビ局名や番組名など一部の固有名詞と人物は仮名です。

某月某日 重役出勤
「誰が言うてんねん」

 入社して1カ月、特別番組の制作打ち合わせ会議に出席した。会議のトップは私の直属の上司である西編成局長、以下、制作局長、技術部長、制作部長、プロデューサー、編成部長、編成担当、ディレクターなど10数名が参集した。

 番組タイトルは「史上最強のサラリーマン」。サラリーマンを100人集め、書類のホチキス止めや早ハンコ押し、昼食の早食いといった“サラリーマンの実力を測る”競技で競わせ、最強のサラリーマンを決定するのだという。プロデューサーは胸を張って企画の主旨を説明した。

 それにしても、ふつうのおっさんたちが競技したところで、果たして面白い番組になるものだろうか。会議の末席に参加した私は、そんなことをぼんやり考えていた。

 プロデューサーが収録の概要を説明し終えたときだった。おもむろに西編成局長が口を開く。

「ところで、当日雨が降ったら、収録はどうするんだ?」

 会議室は水を打ったように静まり返った。

「延期? それともどこか体育館のような場所を押さえているの?」