柴:はい。これは「マツダの長年の夢」といっていいと私は思っています。今までのマツダは、マツダ車を買ったお客様が、「もっといいクルマが欲しいな」と思った時に、上に行くクルマを持っていなかったんです。上級車種を持っていないから、「上がないのならもうマツダはやめてBMWでも買っちゃおうか」と思われてしまう。そして何割かのお客様は、本当にBMWとかメルセデス・ベンツに行ってしまう。そんな流れがあったんです。しかも日本だけではなくグローバルで。

F:なるほど。例えば勤め人の人が、40歳になって役職がついて年収も上がって、ちょっと頑張っていいクルマでも買っちゃおうか、という時に、マツダは上のクルマを持っていなかった。CX-5を買って、マツダのクルマは良いよな。走りも燃費もいいし、カッコも良いよな、と高く評価しているのに、次に乗るクルマがない。そうした人が(メルセデス、BMW、アウディの)ジャーマン3に行ってしまう。あるいはレクサスに流れてしまう、と。

柴:そうなんです。自分で言うのもアレですが、マツダ車を選んでおられるということは、クルマに対する感度が高い方、ということです。所得が上がって余裕が出てきて、もっといいクルマを、となった時にマツダから離れてしまう……。そんなお客様が事実として結構いらっしゃった。

F:これは辛いですね。造る側としては……。

柴:辛いですし、悔しいです。だからこれはずっとマツダの課題だったんです。そういうよそに流れてしまうお客様に満足いただけるようなクルマをいつかは造りたい。そう思ってずっとやってきたんです。

マツダのラージ商品群。CX-60、70、80、90があり、日本国内ではCX-60と80が販売されているマツダのラージ商品群。CX-60、70、80、90があり、日本国内ではCX-60と80が販売されている Photo by A.T.