2024年6月、米シンクタンクの高等国防研究センター(C4ADS)が作成した報告書の概要をフィナンシャル・タイムズ紙が報じた。その記事は、日本の工作機械メーカーのコンピューター数値制御(CNC)機器がロシアの軍需工場で使用されていると指摘していた。記事によれば、それらの機器はアラブ首長国連邦(UAE)や中国に拠点を置く企業を経由してロシアの軍需工場に渡った。その工作機械メーカーは、自社製機器がミャンマーの工場で武器製造に使用されているとの指摘も受けた。

 ウクライナ軍が公開したロシア軍使用のドローンには、多数の日本製部品が含まれていた。カメラやコネクタ、電池など、いずれも冷蔵庫などの家電製品やゲーム機向けに用いられる民生用の汎用(はんよう)品だ。ウクライナ政府が作成したロシア軍兵器に用いられていた外国製部品リストには、100を優に超える日本製部品が掲載され、製造元として日本の大手メーカーがこぞって名を連ねていた。

ウイグル人の行動を監視するカメラに
日本企業の部品が使われていた

 問題となっているのは戦場だけではない。2023年1月には、在日ウイグル人によって設立された日本ウイグル協会と国際人権NGOであるヒューマンライツ・ナウが、中国・新疆ウイグル自治区で住民の行動監視に用いられている中国・ハイクビジョン(杭州海康威視数字技術)製の監視カメラに、日本企業7社の部品が組み込まれていたと発表した。

 ハイクビジョンは、強制労働への関与を理由に米国のエンティティー・リスト(編集部注/米国商務省産業安全保障局が発行している貿易上の取引制限リスト)に掲載され、取引が制限されている企業だ。日本企業7社の中には、人権方針を策定し、サプライチェーン上の人権侵害の排除に努めている企業も含まれているが、それでも深刻な人権侵害に関与している可能性への認識が不足していると批判を浴びた。

 これらの中で、名前を挙げられた日本企業が、武器製造や強制労働に関与している企業と直接取引したケースはまずないだろう。輸出管理の対象ではない製品の販売後の流通経路をすべて把握することは至難の業だ。洗濯機や冷蔵庫などの最終製品から取り出された部品が使われた例や、市場に出回っている中古品が使用された例も報じられている。