1-3月期実質GDP(国内総生産)は、対前期比年率で3.5%の増加となった。これをアベノミクスの効果と見る向きが多いだろう。しかし、詳細に見ると、そうとは言えない面が多いのである。

 とりわけ問題なのは、民間企業設備が減少し続けていることと、輸出増が円安の結果とは言えないことだ。これらの問題について、以下に論じたい。

まだ低い水準

 GDPのデータを見るにあたっては、短期的な伸び率だけでなく、水準を見ることが重要だ。

 なぜなら、2011年は大震災があった年で、経済活動が落ち込んだからだ。しかも、中国への輸出減という事態があった。そして、12年の実質GDPは7-9月で最低になった。そこから緩やかに回復していた。それが続いているということだ。実際、1年前と比べると、実質GDPはほとんど不変だ。

 13年1-3月期においては、実質輸出は増加した。しかし、実額で言えば81.4兆円であり、12年1-3月期に比べれば、3.7%ほど少ない。なお、この期間における実質輸出の増加は、円安の効果ではなく、米国の輸入が増加した影響だと考えられる。これについては、後で述べる。

 実質純輸出は、13年1-3月期においては、8.6兆円に増加した。しかし、10年の水準に比べると、半分にもならない。12年1-3月期に比べても、27.5%の減少になっている。

リーマンショック前へ回復したのは、政府支出のため

 実質GDPの変化を中期的に眺めておこう。実質GDPの水準が、2012年10-12月期においてリーマンショック直前(08年7-9月期)の水準に戻り、13年1-3月期でそれより0.9%ほど高い水準になったのは事実だ。

 しかし、それは、政府最終消費支出と公的固定資本形成が増えたことによる。08年7-9月期と13年1-3月期を比べると、前者は10.5%増、後者は21.5%増だ。

 企業活動に関係する項目である民間住宅と民間企業設備は、いずれもリーマンショック直前よりかなり低い水準になっているのである。前者は11.0%減、後者は12.0%減だ。また、輸出は9.8%減、純輸出は59.2%減だ。

 このように日本経済は、需要面から見て、投資や輸出などの民間経済活動によって主導される構造から、政府支出に依存する構造に変質してしまっているのである。長期的な成長ポテンシャルの点から考えて、このような構造変化は大きな問題であると言わざるをえない。