一方、統合戦略には、社内の資産や既存の事業基盤を最大限に活用できるメリットがあります。これにより、リスクを抑えつつ、新規事業を安定的に成長させることが可能になります。
しかし、統合戦略にも課題があります。新規事業を既存事業の中に組み込むと、短期的な利益の圧力が強くなります。特に、短期PL(損益計算)を重視する企業文化では、新規事業がまだ軌道に乗っていない段階で収益性が問われ、十分な投資を受けられずに終わることがあります。また、本業の意思決定プロセスが重く、スピード感を持った事業展開が難しくなる点もデメリットに挙げられます。
統合戦略を成功させるためには、新規事業の評価基準を本業と分け、短期PLに縛られない体制を整えることが重要です。また、意思決定のスピードを上げるために、新規事業専用のガバナンス構造を設けるなどの工夫も必要でしょう。
新規プロダクト事業が
成功する企業の共通点
出島と統合、どちらの戦略を選ぶとしても、成功する企業には共通点があります。それは、いずれかの段階で新規事業を本体に組み込むということ。初期段階では自由度の高い出島戦略を採用して、スピーディに市場適応しながら実績を作り、一定の成長フェーズに達した段階で統合戦略へと移行し、本業のリソースを活用してスケールさせるのです。
出島と統合は二者択一ではなく、組み合わせて活用することが最も合理的です。企業の成長のために新規事業を本当に成功させるなら、どのフェーズでどのアプローチを選ぶのが最適かを見極め、柔軟に戦略を変えていくことが求められます。
もう1つ、組織内でのデジタル人材の配置についても述べておきます。
マッキンゼーの調査によると、DXを成功に導く企業では、デジタル人材をIT部門ではなくビジネス部門に直接統合し、変革のスピードと効果が大幅に向上していることが示されています。
IT部門に閉じ込められたデジタル人材は技術的なサポートにとどまり、ビジネス変革のドライバーにはなりにくいのです。しかし、デジタル人材がビジネス部門に統合されれば、現場の課題を直接解決し、顧客価値の向上に直結するイノベーションを推進しやすくなります。