上場企業の2012年度(13年3月期)決算発表がほぼ出そろった。今回ほど企業の決算発表に注目が集まることはめったにない。なぜなら、アベノミクス効果によって、昨年11月以降、急速に円安・株高が進んだからだ。こうした外部環境の急激な変化が、企業業績とくに今13年度(14年3月期)の業績に、どのような影響を与えるのだろうか。23日には株価が大暴落しただけに、なお一層企業業績の行方に関心が高まる。
そこで、ダイヤモンド・オンライン編集部では、各社が発表した決算データを基に、今期業績、収益性、安全性、効率性などの指標を使い、企業ランキングをお届けする。企業の評価、株式投資、就職先選び、そして何より関心のある会社が、産業界のどこに位置するかを知ることに、役立つはずである。
増収率と営業増益率の意味
第1回の今回は、「増収率」と「営業増益率」のランキングを行った。増収率とは、売上(あるいは営業収益など)がどれだけ伸びるか(伸びたか)を表したもの。売上は、なんといってもその企業の製品やサービスが、世の中にどれだけ支持されているかを示す基本的な指標である。企業業績はこの売上からスタートする。
営業増益率とは、売上から費用を引いた営業利益がどれだけ伸びるか(伸びたか)を表したものだ。企業の利益には、実は粗利益、営業利益、経常利益、当期(純)利益と何種類もあるが、営業利益はその企業の本業が生み出す利益として注目度が高い。
ランキングの対象は上場企業で、今年1月(13年1月期)から3月(13年3月期)の間に本決算を迎えた2684社。今回対象とした全期間の上場企業は3464社あるので、カバー率は8割弱と、大部分の上場企業が対象となる。上場企業は四半期(3ヵ月)ごとに決算を公表しなければならないが、そのうち1回は過去1年間の成績をまとめて発表する。これが俗に「本決算」と呼ばれるもので、4回の決算発表の中でも、最も注目度が高い。
ランキングは今期(13年度)の予想売上高、予想営業利益と前期(12年度)の実績を比較し、伸び率の高い順に並べている。日本基準でなく米国基準やIFRS基準で営業利益がない場合は、税引き前利益を使った。予想は会社発表のものを使用しているので、予想数字を公表していない企業は除外されている(代表はソフトバンクなど)。
円安のメリットとは
今期の企業業績に大きな影響を与えるのが、為替の変動・円安である。円安は次のようなルートで企業業績に影響を及ぼす。
輸出企業を考えてみよう。ある商品を1ドルで売り、費用が50円だとする。円ドルレートが1ドル80円の場合、円換算の利益は1ドル×80円(売上)-50円(費用)=30円。1ドルが100円の円安になる一方、生産は国内で費用は円で支払っているので変わらないとすると、利益は1ドル×100円-50円=50円。売上増の20円(100円-80円)分が利益の増加となる。
海外での売上を海外生産で対応している場合はどうか。ある商品の販売価格が1ドル、費用が0.5ドルだとすると利益は0.5ドル。1ドル80円なら円ベースの利益は80×0.5ドル=40円。これが1ドル100円になるとどうなるか。海外生産なのでドルベースは変わらないが、円に換算すると1ドル×100-100×0.5=50円となり、利益は10円増える。輸出ほどではなくても、円安の恩恵を受ける。
実際には、海外での販売価格を下げるなど、動きはもう少し複雑だが、円安は輸出企業や海外売上比率の高い企業にはプラスとなる。
一方、原材料や販売する製品の輸入比率が高い企業は、これと逆の動きなりマイナスの影響を受ける。