メンバーはアマチュアなので、譜面を見せただけで、バンマスが考えているように演奏ができるとは限りません。このとき、バンマスが「言った通りに演奏しなさい」と強要したり、細かなところまで指示したりしてしまうと、楽器担当者の意向が反映されないのでバンドで演奏することの面白みが半減します。バンマスのリーダーシップの取り方が強引すぎると、メンバーのモチベーションが低下して、下手をすれば脱退してしまいます。

 マネジメント力にたけたバンマスは、このことを熟知しているので、各自の演奏には必要以上に口出ししません。課題を与えて、進んでいく方向を決めた後は、メンバーに任せきるスタンスでいます。

(2)メンバー集めにおいてスキルより人間性を重視する

 メンバーがコロコロ入れ替わるバンドがある一方で、何年も同じメンバーで運営できているバンドもあります。前者と後者の違いは、メンバーを集める際のバンマスの視点です。前者は演奏力を重視し、後者はスキルよりも人間性に着目してメンバーを人選します。

 前者の場合は、新加入のメンバーを決める際にいきなりスタジオに入り、その人の腕前を試します。後者のバンドでは、スタジオに入る前にカフェなどで話をする機会を持ち、自分たちのバンドメンバーとしてマッチしそうな人物であるかどうかを見極めます。

 楽器演奏の腕前(スキル)は、練習次第でいくらでも伸ばせますが、人間性はすぐに変えることはできません。職場でも、任せるためにスタッフを採用する際は、スキル重視ではなく、人間性重視で行いましょう。

仕事をスムーズに任せる
「スタッフカルテ」の効果

 仕事を任せるとき、誰に任せるのかを慎重に決めなければなりません。任せることでモチベーションが上がり、今まで以上に活躍する部下もいれば、仕事を任せられたことに重圧を感じ、パフォーマンスが落ちてしまう人もいるからです。任せる人を決める際は、各自の特性を把握することが第一歩です。

 私がセブンイレブンのFC店を経営していたとき、30人弱のスタッフの特性を調べて、それを「スタッフカルテ」と私が呼ぶシートに記入し、記録したことをすべて記憶していました。スタッフの特性を理解することで、スムーズに仕事を任せられるようになります。

 スタッフカルテには、各自の性格や趣味、学生時代に取り組んでいたこと、価値観(大切にしていること)、個人のビジョン、得意な仕事、不得意な仕事、興味を持っていること、一番喜ぶ褒め言葉など、スタッフの日頃の言動を観察したり、雑談をする中で気づいたりしたことを記入していきます。