たとえば、スタッフのビジョンについて把握していれば、「これから任せる仕事が将来の夢の実現につながることだ」と伝えれば、積極的に業務に取り組むようになります。また、成果を上げたときに、そのスタッフが喜ぶ褒め言葉を投げかければ、やる気を上げることができます。
ただし、スタッフカルテの取り扱いには注意が必要です。項目が個人情報に関わる場合もありますので、情報が漏洩(ろうえい)しないようにしっかりと管理してください。具体的には、スタッフの名前を記入せずに記号や番号にして管理する、会社名を記入しないなどです。
仕事を任せる時に伝えるべき
部下のやる気を引き出すひと言
任せられた仕事に対して、部下がモチベーション高く取り組むようになるためのキーワードは「期待」と「メリット」、そして「成長」です。
人は信頼できる人から期待されていると分かると、その期待に応えようと思い行動します。これは心理学で「ピグマリオン効果」と呼ばれています。上司、経営者から「あなたならできると信じているよ!」と言われて、「この人から期待されているのだから頑張ろう」と思ったことがあるのではないでしょうか?
良好な人間関係が築かれていることや部下からリスペクトされていることが前提になりますが、仕事を任せる前に「期待している」と伝えると、部下はやる気を出して仕事に励むようになります。
人は自分自身にメリットがあると分かれば、そのことにモチベーション高く取り組みます。私がセブンイレブンのFC店を経営していたときに、スタッフに新しい業務を任せる際、「あなたの人生にとってプラスになることだから頑張って」と伝えていました。
たとえば、学生スタッフをアルバイトリーダーに任命する際は、「学校を卒業して社会人になったときに、同僚や後輩をまとめられるリーダーシップを身に付けていれば、一目置かれる存在になれるよ」「就職活動の採用面接の際に、バイトリーダーをしていたと話せば加点評価がもらえるよ」と伝えていました。そうすることで、任せられた仕事が、自分のメリットになると感じられるので、積極的に任せられた業務に取り組みだします。

岡本文宏 著
「成長」はやる気を高める最大のキーワードです。人は仕事を通じて自己の成長を望んでいます。以前の自分よりも成長できたと感じられれば、嬉しい気持ちになりますし、モチベーションが上がります。
これは、アブラハム・マズローの5段階欲求説の最上位の「自己実現の欲求」を満たすことにつながり、同時に『成長欲求』を満たすものでもあります。成長欲求が満たされる職場からは人は離れようとしないので、離職防止にも効果があります。
(メンタルチャージISC研究所代表取締役 岡本文宏)