私はかつて、入社2年目にリクルート事件を経験した。未公開株譲渡を巡るこの事件は世間から激しいバッシングを受けたが、社内の仕事は変わらず、むしろ企業としては業績を伸ばしていった。働き続けるメリットは明らかに大きかったと感じている。
1988年のリクルートよりフジテレビの方が苦しい
1988年のリクルート事件は、当時の経営者が親交のある官僚や政治家に未公開株を譲渡したことが賄賂と見なされたために起こった出来事だったが、ビジネスの本体にはあまり影響しなかった。求人、不動産、進学情報といった情報産業は右肩上がりで成長しており、社会からの批判はあっても、事業の健全性は揺るがなかった。
一方、フジテレビの場合は様相が異なる。性加害問題への対応は、報道機関としての倫理観、組織文化そのものに疑問を投げかけた。さらに、テレビ業界自体がYouTubeやNetflixの台頭、若年層のテレビ離れにより、構造的に厳しい局面を迎えている。これは「中核が損なわれている」「外部環境的にも逆風あり」という二重苦である。
この構造的な違いを踏まえれば、フジテレビにおける「再建の可能性」は、リクルートとは根本的に異なる条件下にあるといえる。
映像市場の成長とテレビ局の再定義
とはいえ、悲観材料ばかりではない。注目すべきは、「テレビという媒体」は衰退しつつあっても、「映像」という表現手段自体の市場は世界的に拡大していることだ。
矢野経済研究所によると、日本国内の動画コンテンツ市場は2020年に6920億円だったが、2024年には9880億円に達すると予測されている。また、TechNavioの調査によれば、世界のビデオストリーミング市場は2024年から2029年の間の年平均成長率は28.3%で成長すると予測されている。
サイバーエージェントの藤田晋社長は、AbemaTV設立時にテレビ朝日と組んだ理由について、次のように語っている。